チャイムが鳴ると、みんなは一斉にカバンを持って部活や遊びに出ていった。
教室が静かになるころ、私は参考書を抱えて図書室へ向かう。
今日も……ちゃんとやらなきゃ。
窓際の席に座り、ノートを開く。
英単語、数式、歴史の年号。
声に出さないで、ひたすら鉛筆を走らせる。
集中していると、ふと、隣に人の気配がした。
……え?
机を一つ挟んで、誰かが座った。
ページをめくる音。鉛筆の走る音。
同じように勉強している気配。
顔を上げれば、誰なのか分かる。
でも、怖くてできなかった。
……もしかして、あの人?
いや、考えすぎだよね。
胸の奥がざわざわして、文字が頭に入らなくなる。



