俺は………言葉が出なかった。
「お父さんは私を世間体で育ててるんだ………。私のことを本心として愛しては育ててない」
「だからといって、ドナー拒否されるなんて……おかしな話だな」
「うんん。ドナー拒否したのは確かにお父さんが私を殺す口実でやったってのもある。だけど、私も拒否したの」
「………?それは、どうして?」
「だって、司っちが私を「お母さんの面影を追って、近寄ってしまった」っていう事実を知ればもう司っちは耐えられないよ……」
どんな言葉を向ければいいのか、分からなかった俺。
合理的に対応する思考がこんなにも重苦しくて、難しいとは思いもよらなかった。
彼女は去り際に、鍵をくれた。
それはいつか司に渡す最後のカギであってほしいと、俺に託されたのだ。
確かに高校生徒の女の子がこの鍵を、司に渡すのは身が引けるだろう。
そして、現在に戻る。
司は相変わらず、病室の桜の木の下で笑顔を振りまいてボランティアに参加し、教師としての仕事も全うしてる。
俺はいつこの鍵を渡せばいいのだろうと、この雪の鍵が自然に溶けてくれないかと、願いながら。
彼と向き合うつもりだ。
以上、日報記録だ。
この事件にきっと幸がある様に俺は司のそばに居続ける。
fin


