戦ってみるって決めたから。
全ての出来事を事細やかに詳細に話した。
話し終えた矢先。
ゆっくりベンチに座って、息を吸う海さん。
「年老いて言えることやけどなー。若かった頃は、なんぼでも取り返しがつくと思いがちなんやけどーーー超えたらあかんラインってのはあるんやで?兄ちゃん」
「そう……だよな」
「ワイが若い頃もそうやった」
「………海さんにもそんな事が?」
「あるでー。50のジジイやけどな。娘に勘当されたんや」
「勘当………どうして……」
「娘の為を思って、勉強をあり得へんほど押し付けてしもうて、今で言う虐待や」
子供たちの騒ぐ走り超えが廊下に鳴り響く。
寂しさが木霊する気がして、その子供から目をそらした。
「小さい頃から、そうしてしもうて中学の頃行方不明になったんや。実質ーー勘当やな。もうどこにあるのかさえ分からへん」
コーヒー缶を一口飲み終えると、海さんは向き直った。
「例えな、誰かのためを思って相手を傷つけていいなんて考えーーーやっぱり良くないで。アンタの言っていることはそうにしか、やはり聞こえへん」
「そう………ですよね」
「だからこそや」
海は立ち上がり、手を差し伸べて言った。
「兄ちゃんは教師をまだ続けんさかい。それで償うんや。愛ちゃんの教師になって。このワイが娘がこの生まれた病院に来てくれるって淡い期待を抱いて生きることになる前に」
息を吸って、手を取って。
差し出された病室の扉を明けた。
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