嘘だと思った。
司っちが……、林檎先生とキスしてた。
その様子を中庭から除いてて……、傷ついた。
傷ついた?
どうして?
元々、司っちの事を一方的に好きになったのは、私じゃんって。
投げやりになる気持ちや、また振り向いてくれるんじゃないのかって希望を持ってる自分もいて。
粘土を握りつぶされて、油分共にぐちゃぐちゃになった私の心は、誰も取り合ってくれない。
だって彼が一人目の友達だったから。
馬鹿みたい。
支えてくれる仲間も、こんな時にいないなんて。
悲しみが私を包む。
だけども世界は嘲笑っているように、粉雪のようなサラサラな雪が頭にポツポツと降り注ぐ。
穢れのない純粋無垢な雪の結晶である。
だけどももう、司っちに向けられた私の内なる恋心を知ってしまった以上。
もうあの頃のように彼の目の前で笑えない。
走り去って、何処か知らない公園の前でつまずいた。
雪の冷たさと、草木で足元を切って雪に血が滴る。
あぁ……このまま死んでしまいたいって思った。
どうしてだろう、ものすごく心が苦しい。
私は、司っちの全てを知ったきになっていたみたい。
どんな食べ物が好きで、どんな生い立ちで教師になって、どんな事が嫌いでーーーそんな話を毎日してた。
笑い合って、馬鹿言い合って。
それが全て、私だけの世界だと信じ切っていたのに、林檎先生に全て奪われてしまった絶望。
どうしてなんだろう。
いつから司っちの事を、私一人のものだと、錯覚してたんだろう。
司っちは、先生であってみんなのアイドルでなければならないのに、舞い上がってな馬鹿みたい。
涙が出てくる自分も、何だか大嫌い。
自分勝手な思いで、気持ち悪いぐらいにつっぱしって、周りを振り回してる。
そして、明るい意外何の取り柄もない自分が、地球上でちっぽけにも見える。
もう、消えてしまいたい。
目を閉じようと。
「ねぇ、起きてよ。愛ちゃん………」
「え?」
目を開ける。
立っていたのはーーー。
「和也……?」
「走り去っていく愛ちゃん………心配だったから来ちゃったよ………」
「どうして…、どうしてアンタなんか………っ」
「ごめんね……こんな俺で」
「司っちが…、…」
「知ってる」
「何で………」
「あいつは悪い奴だから」
「だからって…、…こんな仕打ちないよ!!!」
「好きだったの?」
「好き…、…好きだったよ!!!」
言葉にならない嗚咽が、世界を包んで。
粉雪のような、雪が私達二人を包んで。
「不器用なところも、何かを考えてるところも、すかしてる所も………全部好きだったよ!!!なのに……なのに………っ!!!」
「もういいよ。もういいよ、愛ちゃん」
「よくないよ……、良くないよ。もう、林檎先生の正体知ってるんでしょ?」
「知ってたの?」
「知ってたよ!!なにかおかしいなって、携帯の件からこの人怖いなって本格的に!!!でも、司っちの前ではそんなふうな顔見せられなかった!!」
その瞬間、和也はこわばった顔をしたけれど。
「でも……俺は、守りたかったんだ。そうなんだ」
そうこぼしてて。
「………?なにが?」
「うんん、独り言。でもね、愛ちゃん。生徒に手を出すような先生は所詮そんなもんなんだよ?」
「でもそれは………私が………」
「でも、どんな理由があっても、許されることじゃないと思うよ。俺はね」
「正義感ぶってこないでよ………こんな時にっ!!!」
はっと息を呑んだ。
いくら追い詰められてるからって、そんな言葉をクラスメイトに吐くなんて………!!
青ざめた私を見て、和也くんは近づく。
それも真剣な眼差しで。
きっと怒られるんだろう。
ーーーごめんなさいっ!!!ーーー
目を強くつぶり、息を止める。
全身を包む温かい熱気。
「え?」
私は和也の腕の中。
抱きしめられてた。
「俺………愛ちゃんの辛かった思い出全て忘れさせてあげるから………お願い。振り向いてよ」
本当は、本当は嫌だった。
でもね司っちの事を考えたら、こうなる運命だったんだと知ったから。
私はーーー私は受け入れるしか、無かったんだ。
弱いね。
私達の絆、なんて。
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