ここはっきり言って、嫌われてしまったほうが話が早いかもしれない。
別に職員室では多少なりとも嫌われているし、一人になるには俺はもう慣れている。
だが、仕事に支障がでそうと考えるとーーー手が止まった。
なんで、なんだ?
何をそんなに、怖がってる?
「やっぱり………相当忘れられないんですね」
「違う」
「え?」
「そんなんじゃない」
「お………怒ってます?」
「そんなんじゃないんだ」
俺は震える手を、押さえてビールを飲み干す。
何で俺はこんな簡単な事を、言い出せずにいるんだ?
いえばいいだろ。
ーーー俺は昔、母親が好きだったーーー
そう言って、嫌われてしまえばいいんだ。
この目の前の女に。
魔女に。
そしていっそ目の前の魔女に嫌われて、また居場所を奪われても、俺はへっちゃらだ。
なのにーーーなぜいまここにきて?
ーーー先生、世界って広いって信じる?ーー
愛が笑った顔が、目の前に現れた。
その笑った顔はキラキラと太陽の光を反射して。
俺は………こいつと一緒にずっといたいと思ったーーー。
だから、だから怖いのか?
この生徒との未来をーーー奪われるのが?
一体、なぜ?
「やっぱり、好きなんですね。愛の事」
「へ?」
「ずっと見てましたもん。あの愛の奴」
急に魔女の顔が豹変する。
それはーーー紫色のリジュネを着た世にも美しいーーー母親。
「か………母さん?」
「私は、あなたのことを思って、ここまでしてあげたのに。どうして振り向いてくれないわけ?」
周りの景色は、元々いた俺の家。
母さんと住んでいた家。
「ねぇ、答えてよ!!!」
あまりの気迫に俺は居た堪れなくなって、意識を手放した。
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