だけども、俺はきっと母親の事を、懐かしく思っているのかもしれない。
何処となく、愛おしいような気持ちも湧き上がってきて。
なんだか、消えたい気持ちになった。
「司先生は、忘れられない人はいますか?」
「へ?」
「なんとなーく。色んな人を保健室でよく見るから、分かるんです。そんな顔をしてるような気がして」
既に俺に、知られたくない過去があることを見抜かれていた事が怖くなって。
思わず後ずさる。
「別に、おかしいことじゃないですよ。誰だってそんな過去はあります。司先生はちょっと顔に出やすいだけで」
「貴方は……貴方は、何なんだ」
口々に、放っていた言葉。
「人の事を………貴方は、なんだと思ってる」
「人の事………ですか」
ゆっくりと、ほほ笑んだ彼女。
それは魔女のような、歪んだ口元。
ピーチ色したルージュに隠れる。
「別に、何とも。先生が思ってる様なくらい考えじゃないですよ。ただーーー」
「ただ?」
「私を楽しませてくれる、駒ーーーかな………」
「駒扱いーーーですか」
「楽しませてくれる、ですよ?人を操る方じゃない」
「だけど、貴方ーーー駒って」
「人は人間を知ることが娯楽って事があるでしょ?私は、色んな人と出会ってその人生に触れてーーー」
林檎先生は俺の唇を人差し指に触れて。
「知りたいんですよ。その人の心の核に」
「心の核ーーー」
「ずーっと気になるんです。司先生の、貴方の心の核が」
「どうして……、どうして気になるんです?」
「だって、貴方ーーーいや今まで見た中で、見たことのない異性ですから」


