勉強会のご褒美は。

笑いかけると、遥翔様は驚いたように少しだけ目を開く。

そして、何か深刻そうな顔をしてこちらに歩いてきた。

雰囲気読まない感じで笑いかけたの、マズかったかな…?!

でも、あの状態で安心してもらうには笑いかける以外に思いつかなかったんだよなぁ…、安心してもらうってところから違う考え方のほうが良かった…っ?

頭のなかで思考を高速で動かしていたら、「弥夏」と呼ばれた。



「はい。」

「今、この一連の出来事全て、訓練だ。」

「…………くんれん」

「そう。俺が父上と葛川にお願いしたんだ。」



遥翔様がお願いした……、くんれん…。

刃物も持ってたのに…?

でも、たしかに遥翔様、かすり傷一つついてない。

葛川くん、すごく手強かったのにかすり傷一つないなんて、よっぽどの熟練者以外にありえない……?

この一連の出来事が、遥翔様が仕組んだ訓練だったんだ……?



「てことは、氷くんもーー」

「いや、氷については何も知らない。」



え、知らない?!

氷くんが遥翔様にも黙っといてって言ってたけど、あれは遥翔様も知らないガチなやつ…?

氷くんの方を見ると、気まずそうにそっぽを向いている。
敦賀先生もすごく気まずそうにしている。



「弥夏、葛川は悪いやつじゃないから、離してあげて。」

「離せぇー…。」

「あ、すみませんっ!」



拘束していた手を離すと、葛川くんはぐるぐると手首を回した。

持つ力、ちょっと強かったかな…? 完全に敵だと思ってたから逃げないようにって強くしてたけど、反省…。

ポキポキと首を鳴らしながら、遥翔様に「帰っていー?」と聞きながら返事を待たずに教室棟に戻っていく葛川くん。

結構、自由人…?

遥翔様はため息をつきながら、氷くんと敦賀先生にあとで話をできるかと相談している。

敦賀先生が氷くんの仲間だって言ってないのに、遥翔様は仲間だってわかってる…?察し能力がお高いなぁ。

すごぉと思いながら待っていると、氷くんが教室棟に戻っていく。

話し終わったのかな?

階段を上っていく氷くんの背中を見守っていると、遥翔様が横に来た。



「今日は短縮5限だから、もう終礼が始まる。行こう。」

「はい。」



今日が短縮だったんだ!!やば、今、遥翔様に心の声聞かれたら朝の先生の話聞いてなかったのバレる。

幸い、聞かれていなかったようで、遥翔様は振り返らずに階段を上っていく。


ーー教室に入る前、遥翔様がふと振り返った。



「弥夏、終礼はちゃんと聞けよ。」

「っ?!?! はいっ!!!」


聞かれてたっ?!