「そうだよね。自分でも不思議なんだけど、話したくなったんだ」
そんなこと、私のほうがもっと不思議に思う。
「大声で言えないけど、俺はイチローの母親のことが、どうも好きになれなくて⋯⋯」
思えば、さっきから、高峰はイチローの母親のことを“女”と呼び、その響きにはどことなく棘があった。
「兄さん、あの女のことを悪く言ったことは一度もないんだけど⋯⋯2年ぐらい前だったかな?『見てくれだけの女には気をつけるんだぞ』って。あの時、兄さんは珍しく酔ってたから、つい本音が出ちゃったんだろうな」
「えっと⋯⋯つまり、イチローの母ちゃんが“見てくれだけの女”ってこと?」
高峰は、小さく頷くと、
「普段、一切弱音は吐かないけど、兄さんは苦労してるんだ。大学を1年で辞めて、未成年同士のデキ婚となれば世間のイメージもよくないから、いい仕事にも就けない。おまけに、スピード離婚してイチローを引き取ったから、自由もない。周りからは、なんで女親が引き取らなかったのかと散々言われるし」
そんなこと、私のほうがもっと不思議に思う。
「大声で言えないけど、俺はイチローの母親のことが、どうも好きになれなくて⋯⋯」
思えば、さっきから、高峰はイチローの母親のことを“女”と呼び、その響きにはどことなく棘があった。
「兄さん、あの女のことを悪く言ったことは一度もないんだけど⋯⋯2年ぐらい前だったかな?『見てくれだけの女には気をつけるんだぞ』って。あの時、兄さんは珍しく酔ってたから、つい本音が出ちゃったんだろうな」
「えっと⋯⋯つまり、イチローの母ちゃんが“見てくれだけの女”ってこと?」
高峰は、小さく頷くと、
「普段、一切弱音は吐かないけど、兄さんは苦労してるんだ。大学を1年で辞めて、未成年同士のデキ婚となれば世間のイメージもよくないから、いい仕事にも就けない。おまけに、スピード離婚してイチローを引き取ったから、自由もない。周りからは、なんで女親が引き取らなかったのかと散々言われるし」



