制服世代

「ありがとう!お姉ちゃん」

イチローと呼ばれた男の子は、おもむろにそう言った。

アイスを食べ終わったイチローは砂場で遊び始め、高峰は隣のブランコに腰掛け、イチローのことを見守っている。

「ありがとう」

突然そう言われ、

「何が?」

私が問うと、高峰は少し苦笑いで、

「イチローにアイスわけてくれて」

「ああ⋯⋯別にいいけど」

思えば、これがはじめての会話だ。

ほんの数秒の沈黙が、なんだか気まずくて、

「弟が居たんだね」

そう言うと、

「イチローは弟じゃないよ。兄貴がいるのにイチローって名前も変だろ?」

言われてみると、確かにそうだ。

「イチローは甥っ子なんだ」

「甥っ子?」

思わず、二人の年の差を計算してしまう。

「妙に思った?」

そう尋ねられ、

「妙ではないけど、高峰はもうオジサンだったんだなぁと思っただけ」

率直な感想がこぼれた。