君は、君のままで。

「まあそうかもな。それにしても…今日はいい夜になりそうだ」

意味深な笑いを浮かべながら、こちらを見てきた

結局私はこの男の手をとった。

どうせ減るもんじゃないし、最後くらい羽目外してみようか、といった気の迷いからだ。

「ていうか、どこに向かおうとしてるの私達」

ふと気になって男の方に問う

「それは着いてからの楽しみってことで。」

先程と人が変わったように、何も言わなくなった。

二人の間には沈黙が広がっている

でも不思議なことに、寧ろこの静けさが心地よく感じた。

「何も聞いてこないんだね。どうして死のうとしてたのか、とか」

疑問を投げかけると、そんなの当たり前だろ、と続けた

「誰にでも触れられたくないことの一つや二つ、あるもんじゃん。君も、俺が橋にいた訳とか触れないでいてくれてるし。同じだよ。」

…へえ。彼のような人が存在するこの世界も、まだ捨てたものじゃないのかもしれない。