このままずっとこうしていたい……と思うけどそうも言っていられない。
私も信士くんも仕事なんだから。
「信士くん! 朝ごはんにしよっ」
「蘭ちゃんを食べるってこと?」
「そうじゃなくて!」
「冗談だよ、かわいいな」
かわいいの連発は本気で心臓に悪い。
今までも「かわいい」は言われてたけど、子どもに対する「かわいい」と同じだと思っていたから――蜂蜜と砂糖を混ぜ合わせたみたいな甘さに耐えられない。
何だか私ばっかりドキドキさせられて悔しいな。
とは言えずっとイチャイチャしているわけにもいかず、やっと朝食を食べ始める。
好きな人とスイートルームの朝食なんて、朝から贅沢すぎる。
胡蝶蘭はダイニングルームに移動させ、陽の光が入りやすいところに置いてあげた。
「ねぇ信士くん、あの胡蝶蘭使ってもいい?」
「使う?」
「あの胡蝶蘭をいけたいの」
「もちろん構わないけど、あの大きさを持っていくの大変じゃないか?」
「タクシー使うから大丈夫」
今からどんな風にいけようかな、って考えるのが楽しい。
信士くんがプレゼントしてくれた胡蝶蘭、大切にいけたい。
「どうしてピンクの胡蝶蘭にしたの?」
「綺麗だったから」
「ピンクの胡蝶蘭の花言葉、知ってる?」
「そういうのは疎いんだ」
信士くんは淡々と答えつつ、ブラックコーヒーを飲んでいる。
「じゃあ、一番好きな花は?」
ちょっとむむっとしながら訊ねると、コーヒーカップをソーサーの上に置き、私の目を見て答えた。
「蘭、かな」
「ふふっ」
ピンクの胡蝶蘭がそっと揺れる。その花言葉の通りに、これからもずっとあなたを愛していく。
そしてこれから何度でも、二人で幸せな朝を迎えたい――。
fin.



