この恋を運命にするために



 きょとんとする私をよそに信士くんは真顔で続ける。


「いきなりうちの実家に住むのは蘭ちゃんも嫌だろ? 俺も嫌だし」
「?」
「もちろん先にご両親には挨拶させてもらう。まず蘭ちゃんのご両親にきちんとご挨拶して、うちの親は適当でいいから」
「ちょ、ちょっと待って!?」


 なんかものすごい話が進められている気がするのだけど!?
 家を探すとか、両親に挨拶するとか、そんなのって――


「なんか、結婚するみたいなんだけど……?」
「結婚するんだよ」
「だ、誰と誰が?」
「自分からプロポーズしたくせにそれを聞くの?」
「え……」


 うそ、本当に……?
 だってさっきのは、八代さんを追い払うための嘘なんじゃなかったの……?

 信じられずに惚けていると、信士くんに「手を出して」と言われた。
 何も考えずに右手を差し出したら「左だよ」と言われ、慌てて左手を差し出す。

 薬指にスッと大粒のダイヤモンドが光る指輪を嵌められた。


「あ、よかった。サイズ合ってた」
「ふぇ……」
「念のため他のサイズも用意してたけど、俺の目利きも捨てたもんじゃないな」
「これ、エンゲージリングみたいだけど……っ」
「だからそうだよ」


 信士くんは呆れたように肩を竦める。


「これを冗談でやる悪質な男だと思うの?」
「違うけど、だって……っ」


 涙で滲んでしまい、指輪をよく見たいのに視界が歪む。
 そんな私の涙を親指で掬い上げ、信士くんは優しく――でもどこかイジワルに笑いかけた。


「結婚しよう」