この恋を運命にするために



 信士くんが八代さんから守るためについてくれた嘘だということはわかってる。
 流石の私もそこまで都合良く解釈しない。

 だけど、それでも嬉しい。
 嘘でも婚約者だと、妻だと言ってくれたことが震える程嬉しくて――泣きそうになった。

 さっきまで恐怖心に蝕まれていたのに、信士くんの言葉が温かく包み込んで溶かしてくれる。
 そして、場違いにも本当にそうなれたらいいのにと願わずにはいられない。


「お前、ヤシロ百貨店の息子らしいな。ここんとこ赤字続きのくせに放蕩息子が遊びまくって借金増やしてるって聞いたぞ」
「そ、それは……」
「その上に俺の――満咲の妻になるひとに手出そうとは……どうなってもいいんだな?」
「み、みつさき……?」


 八代さんは一瞬にして青ざめ、ガタガタと震え始める。


「みっ、満咲ってあの!?」
「そうだよ」


 信士くんが警察手帳を見せると、八代さんは急にその場に正座したかと思うと深々と土下座した。


「す、すみませんでしたぁっ!」
「とっとと失せろ」
「はいぃぃぃっ」


 あまりにも無様な様子で慌てて逃げ帰っていった。
 八代さんの姿が見えなくなり、急にホッとしたのか足がもつれて信士くんに寄りかかる。


「大丈夫? 蘭ちゃん」
「だ、大丈夫……ホッとして力が抜けたみたい」
「もう……心配した」


 ぎゅうっと優しく、包み込むように私を抱きしめてくれる。
 それがすごく安心できて、思わず涙が溢れていた。


「……っ、こわかった……」
「うん、怖かったね」