この恋を運命にするために



 水族館に訪れるのなんて久々だったが、魚は好きなので結構楽しい。
 何より彼女の反応を見ているのが面白い。


「カクレクマノミかわいい〜。カクレクマノミって珊瑚に隠れてるとお花畑にいるみたい」
「花畑……」
「あっ! 今笑った!?」
「笑ってない、ふふっ」
「笑ってるじゃない!」


 なんだかいつの間にかお互いタメ口になってるし。


「蘭ちゃんらしいなって思っただけ」
「それどういう意味!?」


 蘭ちゃんとか呼んじゃってるし。
 呼ぶと一瞬頬を赤らめるのがかわいくて面白くて、また呼びたくなる。


「でもちょっとわかるよ。この珊瑚とか桜みたいで綺麗だな」
「確かに……! 桜にオレンジの花ね、ありかも」


 魚を見ているはずが、花のことを考えているのは流石というべきなのか。


「信士くんは何の花が一番好き?」
「ベタだけど桜かな」
「……蘭って言ってくれないのね」
「引っかからないって」
「むぅ……この前はランも好きって言ってたのに」
「まあ好きは好きだけど――」


 その時着信音が鳴った。栗田からの電話だった。


「――もしもし。……わかった。すぐ向かう」


 電話の内容を聞いて瞬時に切り替えた。
 平穏なデートは突然終わりを迎えた。


「ごめん、仕事だ」


 事前に伝えていたからか、蘭ちゃんはすんなりと受け入れてくれた。


「はい、行ってらっしゃい」
「ごめんね、蘭ちゃんはもう少し見てていいから。迎えを呼ぼうか?」
「ううん、大丈夫。今日はありがとう」
「また連絡する」