この恋を運命にするために



 ……いや、彼女のペースに振り回されている場合ではない。

 今日は現実を突きつけにきたのだから。


「この際だから聞きますけど、君は私の家のことはご存知ですか?」
「はい、父に少し聞いた程度ですけど、お父様は警察庁の刑事局長さんだとか」
「ええ、祖父は警察庁長官で親族含め皆警察関係者です。満咲の名を聞けば、恐れて関わりたくないと思う者がほとんどなんです」


 そう、大抵の者は満咲の権力を恐れるか媚びへつらうかの二択だ。

 財産目当てではないのだとしたら、満咲という太いパイプか大きな後ろ盾か。
 調べたところ、千寿が警察の後ろ盾を欲する理由があるとは思えなかったが確認しておく必要がある。

 だから直接訊ねたのだが、


「私は信士さんが好きなんです。それだけです」


 彼女の返答は相変わらずその一点のみだった。


「初対面の人間を好きになれるものですか?」
「いけませんか」
「いえ、理解に苦しむだけです」


 俺が思っていた以上に彼女の脳内は花畑なのかもしれないな。
 なら、はっきりと告げるしかない。

 代々国内警察の中枢を担ってきた満咲家は、それ故に命を狙われることもある。
 だからこそ俺は誰のことも信用できない。

 初対面で好きだという彼女の言葉を信じることなどできないのだ。