(えっと、この状況は一体……)

 今、アリシアは庭園のガゼボでお茶を飲んでいる。右隣りには現在の婚約者であるフレデリック、左隣には未来の夫と言い張るフレンがアリシアを挟んで座っているのだ。

「俺がアリシアとお茶をしているんですよ、邪魔しないでください」
「いや、俺がアリシアとお茶してるんだ。お前こそ邪魔するなよ」

 アリシアを真ん中にしてフレデリックとフレンがにらみ合っている。

(なんなのよもう!)

 両隣の二人はアリシアの肩と腕に密着した状態で座っている。男性にこんなにも密着されたことのないアリシアはどうしていいかわからない。しかも、二人とも同一人物だけあって見た目がいい。年の近い一つ上のフレデリックも十歳上のフレデリック、もといフレンもどちらもイケメンなのだ。そんな二人に挟まれてアリシアは今にも沸騰しそうなほど顔が赤くなっている。

「アリシア、顔が赤いけれど熱でもあるんですか?心配だ。体調がすぐれない?」

 心配そうに顔を覗き込むフレデリックと目が合うが、その優しく美しい瞳に思わず吸い込まれそうになる。

「だ、大丈夫です!」

 すぐに目をそらしてうつむくと、今度はフレンがニヤニヤしながらアリシアの顔を覗き込む。

「もしかして俺たちに挟まれて照れているのか?若いころのアリシアは反応がうぶで可愛いな」

 静かにアリシアの髪の毛を指で梳き、微笑む。その微笑みがあまりにも色気に満ちていて、アリシアはあまりの恥ずかしさにまたすぐにうつむいた。

(どうしよう、いちいち胸がドキドキしてしまってもたないわ。本当にここから逃げ出したい!けど、逃げられない!)

「気安くアリシアに触るな。それにからかうなんて失礼だろ」

 少しムッとしながら、フレデリックはアリシアの髪の毛をいじるフレンの手をぱしっと軽くたたいた。

「おお、怖。どうせ髪の毛を触る俺がうらやましいんだろ?お前も婚約者なんだから堂々とアリシアの髪の毛のひとつやふたつ触ればいいだろうに。それとも怖気づいてできないか?」
「……っ!なんなんだよあんた!いちいちうるさいな!」

「~いい加減にしてください!」

 両隣でぎゃんぎゃんと言い合う二人にアリシアは目を瞑って叫んだ。さすがの二人もアリシアの様子に驚き、すぐにしゅんとなる。

「……すみません」
「……すまない」

 大人しくなった二人を見て、アリシアはふうっとため息をついた。

(こういうところは息がピッタリなのね)