行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる

 確かに、最近アリシアは体調が優れない。食欲がわかず、微熱も続いて眠気も強く、精神的にも少し揺らぎがちだ。
 フードの女性の言葉とアリシアの様子に、フレンは驚いてアリシアの体に優しく手を伸ばす。

「そうなのか?アリシア!大丈夫か?」
「え、ええ、そんなに心配するほどのことでは……」
「そろそろ医者に診て貰ったらいい。あんた、自分でも薄々気付いているんだろう?」

(……!)

「アリシア?どういうことだ?」

 心配そうにアリシアを覗き込むフレンに、アリシアは動揺を隠せない。まだ予想の域を出ないのだ、言うべきかどうか迷っている時だった。

「ふ、あんたも鈍いんだねぇ。言ったろ、あんたたちには希望の光が見えるって。私はその光を消したくないと思ったからあんたに手を貸したんだよ」
「希望の、光……?……!まさか」

 そう言って、フレンは驚いたようにアリシアを見る。アリシアは戸惑いながらも小さく頷いた。

「まだ、多分、なのだけど」
「ああ!アリシア!本当なのか!」
「だから早く医者に診てもらいな。その希望の光をちゃんと育てていくことが私へのお礼になるんだよ。いいね?」
「ああ、ああ!本当にありがとう!」

 フレンがそういうと、フードの中からフッと小さく笑う声がする。

「いいかい、生きているとさまざまなことが起こる、それは生きている以上避けられないことだ。だが、向き合わなければいけないものを恐れ蓋をすれば、いずれ中身は腐り出し、蓋から中身がこぼれ落ち、後戻りができないことになってしまう。だから、向き合うべきものには恐れずにちゃんと向き合うんだよ。もちろん、向き合うべきではないものに対しては逃げたっていい。でも、向き合えるもの、向き合うべきものには臆することなく向き合いなさい。あんたたちにはそれができるんだ。自分たちでわかっただろう?」

 その言葉に、フレンとアリシアは真剣な顔でしっかりと頷く。それを見て、フードの中からフッ、と小さく笑う声がした。すると、突然フレンたちの背後から歓声が上がった。驚いてフレンたちが後ろを振り返ると、なぜか花火が打ち上がっている。

 ハッとしてフレンが露店商の方を見ると、そこには誰もいなかった。