「お姉様!」

 社交パーティー会場にたどり着くと、すぐにメリッサがアリシアの元へやってきた。メリッサが着ている濃い青色の生地に紫色の宝石の刺繍が施されているドレスは、サリオンの髪と瞳の色と同じだ。
 メリッサの後ろにはサリオンが礼服に身を包み、アリシアとフレンに微笑みかけている。

「メリッサ!サリオン!二人とも元気そうね」
「お姉様たちも!お会いできて嬉しいわ」

 キャッキャと嬉しそうにメリッサははしゃぐ。それを見てフレンは嬉しそうに目を細めた。

「フレン、久しぶりだな」
「ああ」

 サリオンがフレンに声をかける。サリオンの表情は、フレンが過去に戻る前のような危険に満ちた表情ではなく、とても柔らかい。まるで別人のようだとフレンは思った。

「メリッサとは順調のようだな」
「ああ、こんな俺に正面から向き合ってくれるのはメリッサだけだ。一緒にいればいるほどメリッサの魅力に取り憑かれるようだよ」

 サリオンはうっとりとした顔でメリッサを見つめて言う。

「あの日、メリッサが俺の孤独を理解したいと言ってくれたこともそうだけど、アリシアやフレンもそんなメリッサと俺をあたたかく見守ってくれたから、今の俺たちがいる。本当にありがとう。そして、すまなかったな。何度謝罪とお礼を言っても言い足りないくらいだよ」

 そう言ってお辞儀をするサリオンを、フレンは驚いた顔で見てからすぐに微笑んだ。

「いいんだよ。俺もアリシアも、お前たちが幸せでいるならそれでいい。みんながみんな、それぞれの幸せを形にできているならそれでいいんだ」

 そう言って、アリシアとメリッサを眺める。アリシアがメリッサと真剣に向き合ったこと、そしてメリッサがサリオンの孤独を理解したいと歩み寄ったこと、過去の様々な日々を思い出してフレンは静かに微笑む。

 ドレス姿のアリシアとメリッサは楽しそうに談笑していて、美しさと可愛らしさを同時に放つようだ。まるで自分たちの女神を見ているかのような気分になってフレンもサリオンも胸がいっぱいになる。

「しかし、いつも美しいと思っているけど、ドレス姿の二人はいつも以上に美しくてたまらないな」
「お陰で変な虫も近寄りそうなのが気に食わないけど」

 アリシアとメリッサを近くにいる貴族の男性陣が色ボケしたような目で見つめている。隙あらば声をかけお近づきにでも、などと企てている輩もいそうだ。

「確かに。まあ、俺たちが近寄らせなければいいだけの話だ」
「そうだな」

 そう言って、フレンとサリオンはキリッとした顔でアリシアとメリッサの元へ近寄った。