行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる

 フレンの様子おかしい。

 夜中に突然目が覚めて、アリシアを見て涙を流すフレン。怖い夢を見たのだろうと優しく宥めたが、なぜか落ち着くどころかフレンは欲情し、アリシアがどんなに懇願してもやめてくれないほどに抱き潰された。
 元々フレンはアリシアを求めることが多い。騎士団の任務で屋敷を不在にすることも多く、帰ってくると必ずアリシアを求める。もちろんアリシアにとっても嬉しいことなのだが、あの日のフレンはそれはそれはすごかった。今までで一番すごかったのではないだろうか。もしかして、今まではアリシアのために手加減してくれていたのだろうかと思ってしまうほどだった。

 とにかくあの日から、フレンはおかしいのだ。どこに行くにも何をするにもアリシアのそばを離れず、任務で離れてしまう時は帰ってきてからとにかくアリシアにべったりだ。

 元々、心配性で嫉妬深く、アリシアへの執着心は強い方だと思う。それは婚約者時代から思っていたことで、どうしてこの人は自分なんかを選び、こんなにも愛してくれるのだろうと不思議に思っていた。
 だが、別に嫌な気持ちにはならい。元々フレンは見た目も育ちもよく、性格も基本的に穏やかで、アリシアの嫌がることは絶対にしないような男で、全身全霊でアリシアを愛していることを表現してくるのだ。

 だが、あの日からフレンのアリシアに対する執着は増したように思う。よっぽど辛く悲しい夢でも見たのだろうか。

(かれこれ一緒になって十年近くなるけれど、こんなフレンは初めてかも。私の知らないフレンがまだいるのかもしれないわ。それにしても、どうしたら落ち着いてくれるのかしら。ここまでだと逆に心配になる。フレンがこうなってしまう何かを拭ってあげられたらいいのだけれど)

 夢の内容を聞いても具体的なことは教えてくれない。それが逆に引っかかる。原因がわからない以上、対応も何が正しいのかわからない。

(日が経って次第に落ち着いてくれればいいのだけれど)

 ほうっとため息をついてアリシアは窓の外を眺めた。






 フレンが元いた未来に戻ってきてから数週間が経った。今日は上流貴族の社交パーティーの日だ。アリシアは、フレンが選んでくれたドレスを見に纏い、パーティーに向けて支度をしていた。

「アリシア、入ってもいいか?」

 ドアがノックされ、フレンの声がする。

「はい、どうぞ」

 ちょうど支度も終わったところだ。アリシアが明るい声で返事をすると、フレンが部屋に入ってきた。

(やっぱり何度見ても素敵……!)

 礼服に身を包んだフレンを見て、アリシアはほんのり顔を赤らめる。騎士服姿も似合うが、いつもとは違う見なれぬ礼服姿のフレンはいつも以上に色気があってかっこいい。思わず見惚れてしまうほどだ。

 アリシアが見とれていると、フレンはアリシアのドレス姿を見て目を大きく見開いている。