行き倒れ騎士を助けた伯爵令嬢は婚約者と未来の夫に挟まれる

 翌日。フレデリックの部屋に、フレンとフレデリック、アリシアの三人が揃っていた。フレンの手には銀細工の施されたワインレッドとパープルを入り交ぜたような色の美しい鉱石がキラキラと輝いている。

「本当に、色々とありがとうな」

 フレンが微笑んでそう言うと、フレデリックとアリシアは複雑そうな顔でフレンを見る。

「そんな心配するなって。きっと大丈夫だ。……今のアリシアのこと、頼んだぞ」
「ああ、言われなくてもアリシアは俺が大切にする。俺はあんたであんたは俺なんだから、わかるだろ」
「ふっ、そうだな」

 フレンは少し笑ってアリシアを見た。

「それじゃあな、アリシア。未来でまた会おう」
「フレン様……未来の私と、どうかお幸せに」

 アリシアは胸の前で両手をぎゅっと握り締め、なんとか笑顔を作ってフレンへ言った。それを見てフレンは少し寂しげに微笑み、握りしめていた鉱石を見つめ、静かに息を吐く。そしてまた二人に視線を戻した。

「それじゃ、二人とも元気で。って言うのもなんか変な感じだけど、それでもだ。元気でな」

 フレンの言葉に、フレデリックはアリシアの肩をそっと抱き微笑む。アリシアもフレデリックを見てからフレンを見て、静かに微笑んで頷いた。

 フレンは片手に乗せた鉱石をじっと見つめた。

(お願いだ、本来俺がいるべき未来に戻してくれ。アリシアの側にいたいんだ)

 静かに目を瞑り、フレンは鉱石に祈る。すると、鉱石が徐々に光りだし、その光は瞬く間にフレンを覆った。

「!」

 あまりの眩しさにフレデリックとアリシアは目を瞑ると、光はすぐに収まった。そっと目を開けると、そこにもうフレンの姿はない。

「行って、しまったんだな」

 ぽつり、とフレデリックがつぶやく。

(本当に、消えてしまった……ちゃんと未来へ、戻れたのかしら)