フレデリックの顔のすぐ横で小さな爆発が起こる。フレデリックの頬にほんの少しだけ火傷の跡ができたが、フレデリックは表情を変えずにサリオンを睨みつけていた。
「はは、すまないね、つい感情が荒ぶってしまって魔法が発動しちゃったよ。でも、さすがは騎士と言ったところだね。あの程度じゃ怯みもしないか」
「感情が荒ぶったくらいで魔法が発動するなんて、魔法科で学園一位の成績だったお前にしては動揺しすぎなんじゃないのか」
サリオンは王立学園の魔法科で常に一位の成績の優秀な学生だった。フレデリックがわざと煽るようなことを言って挑発するが、サリオンは微笑みを絶やさない。
「メリッサのことだ、仕方ないだろう。メリッサは俺にとって唯一無二の存在なんだよ」
「お前が優秀すぎて学園で浮いていても、唯一態度を変えずにお前を恐れることなく接する人間だったからか?」
フレデリックの言葉に、サリオンはへえ、と目を大きく開いてさらに口角を上げる。
「もしかして、メリッサから聞いたの?メリッサもあの日のことを覚えてくれていたんだね、嬉しいな」
◇
サリオンは学園の中で抜きんでで魔力量が高く、成績も三年間ずっと一位だった。ひがみや妬みもあったのだろう、サリオンは学園内で浮いていて、たいていはひとりぼっちだった。だが、サリオンは別に寂しいという感情もなく、ひとりでいても平気だった。
魔法科は魔法の歴史から魔法薬、光魔法から闇魔法まで様々な魔法に関する知識と技術を勉強する。闇魔法の授業の時、サリオンは闇魔法についてほんの少し教えられただけで内容をすべて理解してしまった。実際に使うことは禁じられており、授業も実技は無く机上での授業だけだ。そんな闇魔法を教師でさえも全てを理解することは難しいのに、あっさりと理解できてしまったサリオンを教師はひどく恐れた。そして、そんな教師を見て、生徒たちもサリオンを恐れるようになった。
そして、闇魔法を理解できるだなんて悪魔だ、魔族だと生徒も教師も皆で陰口を叩き、今まで以上にサリオンは孤独になっていった。
(くだらないな。自分たちが才能がないだけの話なのに、自分たちと違うというだけでいちいち排除しようとする)
サリオンは教師や生徒たちの反応に悲しみも落胆もしなかった。そもそも他人に興味がなかったのだ。何を言われても、サリオンは怒ることも悲しむこともせず、ただ無反応だった。
そんなとある日、学園内に獰猛な魔獣が入り込む。教師たちでさえも苦戦する中、サリオンが簡単に倒してしまった。それを見た教師や学生たちが、今度は魔獣を引き入れたのがサリオンだと言い出す。
「お前がこの魔獣を学園内に入れたんだろう!自分しか倒せない魔獣を入れて、自分で倒すだなんてそんなに手柄が欲しかったのか!?みんなに無視されてそんなに悔しかったのか、そんなにも目立ちたかったのかお前は!」
同級生の一人が、サリオンに向かって大声で宣う。
(何を言ってるんだ、こいつは)
呆れてため息をつくと、学年関係なくその場にいた学生たちが次々にサリオンを非難し始める。さらに、その学生たちを止めるどころか教師たちまで一緒になってサリオンを非難し始めたのだ。
飛び交う怒声、非難、誹謗中傷。どこを見わたしても、サリオンを一方的に責める人間しかいない。
(ああ、うるさいな……!頭が、痛い。いっそのこと、この場の全員を殺してしまえばいいのか?そうすればこいつらは満足なのか?くだらない血を流したところで何にもならない。そんなのわかってる、けどうるさい、黙らせたい)
サリオンが顔を顰めて両手で頭を抑えてうつむくと、怒声は増していく。サリオンが我慢ならずに魔法を発動させてしまおうかと思ったその時。
「はは、すまないね、つい感情が荒ぶってしまって魔法が発動しちゃったよ。でも、さすがは騎士と言ったところだね。あの程度じゃ怯みもしないか」
「感情が荒ぶったくらいで魔法が発動するなんて、魔法科で学園一位の成績だったお前にしては動揺しすぎなんじゃないのか」
サリオンは王立学園の魔法科で常に一位の成績の優秀な学生だった。フレデリックがわざと煽るようなことを言って挑発するが、サリオンは微笑みを絶やさない。
「メリッサのことだ、仕方ないだろう。メリッサは俺にとって唯一無二の存在なんだよ」
「お前が優秀すぎて学園で浮いていても、唯一態度を変えずにお前を恐れることなく接する人間だったからか?」
フレデリックの言葉に、サリオンはへえ、と目を大きく開いてさらに口角を上げる。
「もしかして、メリッサから聞いたの?メリッサもあの日のことを覚えてくれていたんだね、嬉しいな」
◇
サリオンは学園の中で抜きんでで魔力量が高く、成績も三年間ずっと一位だった。ひがみや妬みもあったのだろう、サリオンは学園内で浮いていて、たいていはひとりぼっちだった。だが、サリオンは別に寂しいという感情もなく、ひとりでいても平気だった。
魔法科は魔法の歴史から魔法薬、光魔法から闇魔法まで様々な魔法に関する知識と技術を勉強する。闇魔法の授業の時、サリオンは闇魔法についてほんの少し教えられただけで内容をすべて理解してしまった。実際に使うことは禁じられており、授業も実技は無く机上での授業だけだ。そんな闇魔法を教師でさえも全てを理解することは難しいのに、あっさりと理解できてしまったサリオンを教師はひどく恐れた。そして、そんな教師を見て、生徒たちもサリオンを恐れるようになった。
そして、闇魔法を理解できるだなんて悪魔だ、魔族だと生徒も教師も皆で陰口を叩き、今まで以上にサリオンは孤独になっていった。
(くだらないな。自分たちが才能がないだけの話なのに、自分たちと違うというだけでいちいち排除しようとする)
サリオンは教師や生徒たちの反応に悲しみも落胆もしなかった。そもそも他人に興味がなかったのだ。何を言われても、サリオンは怒ることも悲しむこともせず、ただ無反応だった。
そんなとある日、学園内に獰猛な魔獣が入り込む。教師たちでさえも苦戦する中、サリオンが簡単に倒してしまった。それを見た教師や学生たちが、今度は魔獣を引き入れたのがサリオンだと言い出す。
「お前がこの魔獣を学園内に入れたんだろう!自分しか倒せない魔獣を入れて、自分で倒すだなんてそんなに手柄が欲しかったのか!?みんなに無視されてそんなに悔しかったのか、そんなにも目立ちたかったのかお前は!」
同級生の一人が、サリオンに向かって大声で宣う。
(何を言ってるんだ、こいつは)
呆れてため息をつくと、学年関係なくその場にいた学生たちが次々にサリオンを非難し始める。さらに、その学生たちを止めるどころか教師たちまで一緒になってサリオンを非難し始めたのだ。
飛び交う怒声、非難、誹謗中傷。どこを見わたしても、サリオンを一方的に責める人間しかいない。
(ああ、うるさいな……!頭が、痛い。いっそのこと、この場の全員を殺してしまえばいいのか?そうすればこいつらは満足なのか?くだらない血を流したところで何にもならない。そんなのわかってる、けどうるさい、黙らせたい)
サリオンが顔を顰めて両手で頭を抑えてうつむくと、怒声は増していく。サリオンが我慢ならずに魔法を発動させてしまおうかと思ったその時。



