アリシアとメリッサの話が終わり、メリッサは泣き止んで落ち着きを取り戻していた。メリッサが落ち着くまで、アリシアはメリッサの隣に座ってメリッサの膝の上に置かれた手を優しく握りしめている。

「ありがとうございます、お姉さま。もう大丈夫です」

 ほうっと息を吐いて、メリッサはむかえに座っているフレデリックとフレンをジッと見つめた。

「お二人にも謝らなければいけませんね。本当に、申し訳ありませんでした」

 そう言って、メリッサは深々とお辞儀をする。

「メリッサ、君がなぜあの日あんなものを持っていたのか、詳しく教えてくれないか?」

 フレデリックが静かな口調でそう言うと、メリッサは顔を上げて少し渋い顔をする。

「あれは……とある方が、私にくださったものです。私がフレデリック様とお姉さまの邪魔をしていることを知って、私のことをいつも応援しているからと。あの薬はそういうものだけど、ほんの少しだけならすぐにおさまるし大事にはならないから大丈夫だ、あいつらをすこしからかってやればいいって言われたんです」

 メリッサの話を聞いて、フレデリックもフレンも顔を盛大に顰める。すぐにおさまりましなかったし、確かに大事には至らなかったけれどそれはフレンとフレデリックの連携がうまくいったからだ。そうでなければどうなっていたかわからない。メリッサは確実に嘘を吹き込まれている。

「その人間は、サリオンじゃないのか?」
「どうしてそれを……!?」
「やっぱりか。……サリオンは危ない。メリッサのためにも、アリシアのためにも、今後は接触しない方がいい」
「そんな、サリオン様は私のことをいつも応援してくださって、いつも親身になって話を聞いてくださるんです。危険な方だなんて思えません」
「応援してる相手に姉に媚薬を盛らせるような人間が、危険じゃないとでも?」

 フレンがそう言うと、メリッサはハッとしてから辛そうな顔をしてうつむく。

「どんなにいい人そうな顔をしていても、親身になってくれていても、おかしいことをしていればそれは本当にいい人ではない可能性が高い。そしてそれに気付けないほどに、君はサリオンに騙されているんだ」
「そ、んな……」

 メリッサが肩を震わせて呟くと、アリシアがそっとメリッサの肩を抱きしめた。

「メリッサ、サリオンとどうやって知り合ったのか、今までどんな話をしてきたのか俺たちに教えてくれ。サリオンに今後どう対応していくか考える必要がある」
「わ、かりました」

 メリッサが弱弱しい声でフレデリックにそう答えると、フレンが静かに口を開いた。

「サリオンへの対応だが、俺に、考えがある。もちろん、メリッサ嬢の話を聞いてからだが、俺の話も聞いてくれ」