「メリッサが実の妹じゃないって話、あんたも知っていたのか」

 フレデリックの執務室に来ると、フレデリックはフレンに話しかける。

「……ああ、アリシアとの婚約が決まった時、アリシアが聞いていた。だからお前もそのうちアリシアから聞くだろうと思っていた。聞いたんだな」

 フレンの言葉に、フレデリックは小さくため息をつく。

「驚くことばかりだよ。どうして未来であんたたちは、メリッサとちゃんと話し合わなかったんだ?ちゃんと話し合っていれば、メリッサがアリシアの命を狙うことも、あんたが誰かに刺されることもなかっかもしれないだろ?」

 フレデリックが厳しい視線をフレンに送ると、フレンはそれをしっかりと見つめ返す。

「未来でのメリッサは確かにわがままな所はあるけど、こっちのメリッサみたいに極度におかしな様子を見せなかった。俺に対して好意を向けているのは変わらなかったが、今回みたいにおかしな真似をすることもなかった。メリッサがアリシアの命を狙ってると知った時まで、そんな素振りは一切見せなかったんだ。俺がメリッサを警戒するようになったのは、アリシアが狙われるようになってからだ」
「こっちのメリッサとは少し違うのか。わけがわからないな。……今回、メリッサはなんで媚薬なんてもの持ってたんだろう。おかしいと思わないか?」
「それはつまり、誰かがメリッサを唆した?」
「その可能性は否定できないだろ」

 フレデリックに言われて、フレンは顎に手を添えて唸る。

「ないとは言い切れないだろうけど……。あるとすれば、メリッサに狂信的に惚れている、メリッサの夫になるあいつくらいしか思い浮かばない」
「それって誰なんだよ?」
「お前もよく知ってる男だよ。サリオンだ」

 その名前を聞いて、フレデリックは驚愕した顔でフレンを見つめた。