◇
「あんた、死相が出てるね。もうすぐ死ぬよ」
それは、過去に戻る前のこと。アリシアと一緒に街で買い物をしていると、突然露店から声がした。
「は?穏やかじゃない話だな。そんなこと言って何か高価なものでも売りつけるつもりか?」
フレン、つまり未来のフレデリックはそう言って警戒したが、フードを被った女性は楽しそうに笑う。
「そんなことしないさ。捕まりたくないからね。別に私だって他人の人生に口出ししようなんざ思わないよ。でもねえ、あんたは奥さんを残して死ねないだろ?あんたたち夫婦には新しい希望の光が見える。それが見えてしまったのに、それを消すようなことはしたくないからね」
そう言って、女性は袖から一つの鉱石を取り出した。その鉱石はワインレッドとパープルを合わせたような色で、銀細工が施してありとても美しい。
「これを持っていなさい。きっとあんたを守り導くだろうよ。過去の私に会ったら、無視せずにちゃんと話をするんだよ」
そう言って、女性は無理やり未来のフレデリックの手を取って鉱石を握らせる。
「あ、おい、ちょっと」
未来のフレデリックが鉱石を返そうとすると、突然後ろで歓声が上がる。驚いて振り向くと、大道芸が道を歩いていた。ふと露店に目を戻すと、驚くことに、そこには誰もいなかった。
◇
「まさか、あの時の?」
「ふふふ、思い出してくれたかい?」
「信じがたいが、確かにあんただ。……お守りって、結局俺は死ぬことになったんだぞ?ちっとも守ってくれてないじゃないか」
内ポケットから鉱石を取り出し、見つめながらそう吐き捨てると、フードを被った女性はふふ、と小さく笑った。
「でも、死なずに過去へ戻ってきただろう?こうして私にも会えた。その鉱石が導いてくれたんだ。あんたを守れた証拠だよ。未来へ戻りたいんだろ?」
「帰れるのか?」
フレデリックが驚愕の眼差しを向けると、フードの女性はまたふふふ、と小さく笑う。
「そのためにそれを渡した。いいかい?チャンスは一度きりだ。このまま戻ったとしてもあんたは同じ目にあって今度こそ死ぬ。そうならないように、こっちでしっかりと問題を片づけるんだ。片づいたなら、その鉱石を手の上に乗せて祈りな。元の場所に戻してくれって」
「それで、帰れるんだな?」
「チャンスは一度きり。大切に使うんだよ。未来の私にもしまた会えたら、ちゃんとお礼を言っておくれ」
「ちょっと待ってくれ、まだ聞きたいことが……」
フレンが言いかけた時、またあの時と同じように背後で歓声が上がる。思わず振り向くと、なぜか花火が打ち上がっていた。ハッとして露店の方を振り向くと、またあの時と同じようにそこには誰もいなかった。
「あんた、死相が出てるね。もうすぐ死ぬよ」
それは、過去に戻る前のこと。アリシアと一緒に街で買い物をしていると、突然露店から声がした。
「は?穏やかじゃない話だな。そんなこと言って何か高価なものでも売りつけるつもりか?」
フレン、つまり未来のフレデリックはそう言って警戒したが、フードを被った女性は楽しそうに笑う。
「そんなことしないさ。捕まりたくないからね。別に私だって他人の人生に口出ししようなんざ思わないよ。でもねえ、あんたは奥さんを残して死ねないだろ?あんたたち夫婦には新しい希望の光が見える。それが見えてしまったのに、それを消すようなことはしたくないからね」
そう言って、女性は袖から一つの鉱石を取り出した。その鉱石はワインレッドとパープルを合わせたような色で、銀細工が施してありとても美しい。
「これを持っていなさい。きっとあんたを守り導くだろうよ。過去の私に会ったら、無視せずにちゃんと話をするんだよ」
そう言って、女性は無理やり未来のフレデリックの手を取って鉱石を握らせる。
「あ、おい、ちょっと」
未来のフレデリックが鉱石を返そうとすると、突然後ろで歓声が上がる。驚いて振り向くと、大道芸が道を歩いていた。ふと露店に目を戻すと、驚くことに、そこには誰もいなかった。
◇
「まさか、あの時の?」
「ふふふ、思い出してくれたかい?」
「信じがたいが、確かにあんただ。……お守りって、結局俺は死ぬことになったんだぞ?ちっとも守ってくれてないじゃないか」
内ポケットから鉱石を取り出し、見つめながらそう吐き捨てると、フードを被った女性はふふ、と小さく笑った。
「でも、死なずに過去へ戻ってきただろう?こうして私にも会えた。その鉱石が導いてくれたんだ。あんたを守れた証拠だよ。未来へ戻りたいんだろ?」
「帰れるのか?」
フレデリックが驚愕の眼差しを向けると、フードの女性はまたふふふ、と小さく笑う。
「そのためにそれを渡した。いいかい?チャンスは一度きりだ。このまま戻ったとしてもあんたは同じ目にあって今度こそ死ぬ。そうならないように、こっちでしっかりと問題を片づけるんだ。片づいたなら、その鉱石を手の上に乗せて祈りな。元の場所に戻してくれって」
「それで、帰れるんだな?」
「チャンスは一度きり。大切に使うんだよ。未来の私にもしまた会えたら、ちゃんとお礼を言っておくれ」
「ちょっと待ってくれ、まだ聞きたいことが……」
フレンが言いかけた時、またあの時と同じように背後で歓声が上がる。思わず振り向くと、なぜか花火が打ち上がっていた。ハッとして露店の方を振り向くと、またあの時と同じようにそこには誰もいなかった。



