「あの、謝らないでください。フレデリック様は私のためにしてくださったのですし、そのおかげで私はこうしてなんともありませんし」

 あんなに熱く苦しかった体が、今は嘘のようにすっきりとしている。

「本当に大丈夫?求められるままに応じていたけれど、やりすぎだったんじゃないかと心配になって」

 フレデリックの言葉に、アリシアはなんとなく最中のことを思い出して心臓がバクバクと鳴ってしまう。フレデリックの手を見て、口元を見て、記憶がまた所々思い出されて、お腹の奥がじんわりするのを感じた。

(ど、どうしよう、フレデリック様のこと直視できない)

「アリシア、そんな可愛い反応されると、俺もどうしていいかわからなくなる」

 フレデリックも戸惑っているようだ。そういえば、とアリシアはドアを見る。

「そういえば、フレン様は……?」

 体調のおかしくなったアリシアを、安全な部屋まで連れて行ってくれたのはフレンだ。それに、フレンにも無理を言って困らせてしまった気がする。謝らなければ、とアリシアは思ったが、フレデリックは少しだけ気に食わないというような顔をする。

「フレンのことは、気にしなくていいよ。今日は調べたいことがあると言って街に行った」
「そう、ですか」
「フレンに会いたかった?」
「えっ、そういうわけでは……」

 返答に困るアリシアに、フレデリックは手を伸ばして頬に手を添えた。フレデリックの手が暖かい。その暖かさと感触に、アリシアはまた体の奥が熱くなる。

「俺と一緒にいる時に、あいつのことは考えないでほしいな」
「未来のフレデリック様なのに?」
「それでも、だよ。前にも言っただろう」

 そっと額を合わせてフレデリックは目を閉じる。顔の近さにアリシアがくらくらしていると、フレデリックは静かに額を離した。

「ふふ、俺のことでいっぱいになった?」
「は、い」
「今日はゆっくり休んでいて。メリッサのことは、いずれちゃんと話し合おう。実の妹だと言っても、やっていいことと悪いことがある」

 厳しい顔つきでフレデリックが言うと、アリシアは神妙な顔でフレデリックを見つめる。

「アリシア?」
「フレデリック様、メリッサのことについて、話したいことがあります」
「話したいこと?」
「メリッサは、……実の妹ではないのです」