◇
「それで、話とは?」
バルコニーには人がいない。メリッサと二人きりになったフレンは警戒した表情でメリッサに問いかけた。
「お手紙に書いた通りです。フレン様はお姉さまのことを気になっていらっしゃるのでしょう?私の言う通りに動いてくだされば……」
「何か勘違いなさっているようだが、俺はアリシア嬢に特別な感情は抱いていないし、フレデリックとアリシア嬢の仲を邪魔するつもりは全くない」
はっきりと言い切るフレンに、メリッサは不機嫌そうな顔をする。
「そもそも、あなたはどうして二人の邪魔をしようとするのです?アリシア嬢はあなたの姉だ。あなたがいくらフレデリックのことを思っているといっても、婚約した二人の間にちょっかいをだそうとするのは悪趣味だと思うが」
フレンの言葉に、メリッサはキッと厳しい顔でフレンを睨みつける。いつもの可愛い顔が台無しだ。
「お姉さまはいつだって私のほしいものは譲ってくださるんです。でも、今回だけは違う。私はフレデリック様がほしい。お姉さまに譲っていただけないのなら、自分で奪うまでです。そのためならなんだってします」
「実の姉妹なのに?」
メリッサは不機嫌そうな顔のまま無言だ。
「メリッサ、いい加減にしないか」
メリッサとフレンの背後から、フレデリックの声がする。メリッサが振り返ると、厳しい顔のフレデリックと悲し気な顔のアリシアがいた。
「お二人共どうして」
「メリッサ、君がどんなに俺を慕ってくれたとしても、俺の気持ちが君に傾くことはない。こんなことしても無駄だ、いい加減あきらめてくれ」
「そんなこと、わからないじゃないですか。お姉さまとの婚約を解消して私と一緒になってくだされば、私はフレデリック様をいずれ虜にして見せます」
「メリッサ……」
強気なメリッサの発言に、アリシアは頭を殴られたような気持ちになる。いつも可憐で可愛いメリッサがどこにも見当たらない。
「メリッサ、申し訳ないのだけれど、この婚約は私の一存では解消できないの。あなたにフレデリック様をお譲りすることはできないわ。あなただってもうすぐ成人するのだし、子供ではないのだからわかるでしょう」
「お姉さまはフレデリック様のことがお好きですか?別にそうではないのですよね?そんなの、フレデリック様がかわいそう」
「それは……」
(好きかと言われてしまうと返答に困るけど、フレデリック様への気持ちが一体何なのか説明しろと言われたら余計に困ってしまうわ)
アリシアにとってフレデリックは親が決めた婚約者だ。だが、最近一緒に過ごすようになってフレデリックから向けられる思いや態度に、いちいち胸が高鳴ってしまう。この不思議な気持ちが何なのかわからず、フレデリックへの気持ちの変化に戸惑っていた。
「お二人はちゃんと思い合っていますよ。これからも、未来でも。側で見ている俺が保証します」
フレンがきっぱりとそう言うと、フレデリックもアリシアの肩をぐっと引き寄せてアリシアを腕の中に閉じ込める。突然のことにアリシアは赤面し、その様子を見てメリッサはさらに不機嫌さをあらわにした。
「何それ。まるで私がお二人の仲を邪魔してるみたいじゃない。いつもお姉さまは私のほしいものをくれるのに、フレデリック様だけは譲れないだなんて許せないわ。気分が悪いので失礼します」
そう言って、プイっと踵を返してメリッサはいなくなった。
「それで、話とは?」
バルコニーには人がいない。メリッサと二人きりになったフレンは警戒した表情でメリッサに問いかけた。
「お手紙に書いた通りです。フレン様はお姉さまのことを気になっていらっしゃるのでしょう?私の言う通りに動いてくだされば……」
「何か勘違いなさっているようだが、俺はアリシア嬢に特別な感情は抱いていないし、フレデリックとアリシア嬢の仲を邪魔するつもりは全くない」
はっきりと言い切るフレンに、メリッサは不機嫌そうな顔をする。
「そもそも、あなたはどうして二人の邪魔をしようとするのです?アリシア嬢はあなたの姉だ。あなたがいくらフレデリックのことを思っているといっても、婚約した二人の間にちょっかいをだそうとするのは悪趣味だと思うが」
フレンの言葉に、メリッサはキッと厳しい顔でフレンを睨みつける。いつもの可愛い顔が台無しだ。
「お姉さまはいつだって私のほしいものは譲ってくださるんです。でも、今回だけは違う。私はフレデリック様がほしい。お姉さまに譲っていただけないのなら、自分で奪うまでです。そのためならなんだってします」
「実の姉妹なのに?」
メリッサは不機嫌そうな顔のまま無言だ。
「メリッサ、いい加減にしないか」
メリッサとフレンの背後から、フレデリックの声がする。メリッサが振り返ると、厳しい顔のフレデリックと悲し気な顔のアリシアがいた。
「お二人共どうして」
「メリッサ、君がどんなに俺を慕ってくれたとしても、俺の気持ちが君に傾くことはない。こんなことしても無駄だ、いい加減あきらめてくれ」
「そんなこと、わからないじゃないですか。お姉さまとの婚約を解消して私と一緒になってくだされば、私はフレデリック様をいずれ虜にして見せます」
「メリッサ……」
強気なメリッサの発言に、アリシアは頭を殴られたような気持ちになる。いつも可憐で可愛いメリッサがどこにも見当たらない。
「メリッサ、申し訳ないのだけれど、この婚約は私の一存では解消できないの。あなたにフレデリック様をお譲りすることはできないわ。あなただってもうすぐ成人するのだし、子供ではないのだからわかるでしょう」
「お姉さまはフレデリック様のことがお好きですか?別にそうではないのですよね?そんなの、フレデリック様がかわいそう」
「それは……」
(好きかと言われてしまうと返答に困るけど、フレデリック様への気持ちが一体何なのか説明しろと言われたら余計に困ってしまうわ)
アリシアにとってフレデリックは親が決めた婚約者だ。だが、最近一緒に過ごすようになってフレデリックから向けられる思いや態度に、いちいち胸が高鳴ってしまう。この不思議な気持ちが何なのかわからず、フレデリックへの気持ちの変化に戸惑っていた。
「お二人はちゃんと思い合っていますよ。これからも、未来でも。側で見ている俺が保証します」
フレンがきっぱりとそう言うと、フレデリックもアリシアの肩をぐっと引き寄せてアリシアを腕の中に閉じ込める。突然のことにアリシアは赤面し、その様子を見てメリッサはさらに不機嫌さをあらわにした。
「何それ。まるで私がお二人の仲を邪魔してるみたいじゃない。いつもお姉さまは私のほしいものをくれるのに、フレデリック様だけは譲れないだなんて許せないわ。気分が悪いので失礼します」
そう言って、プイっと踵を返してメリッサはいなくなった。



