「見て!フレデリック様よ!」
「護衛のフレン様も素敵ね」

 舞踏会当日。フレデリックの選んだドレスを着たアリシアの隣にフレデリック、二人のすぐ後ろをフレンが歩いている。礼服姿に身を包んだフレデリックとフレンを見て、会場にいる令嬢たちが黄色い声をあげながらアリシアたちを見ていた。

(こんなにお美しいお二方と一緒にいるなんて、いたたまれないわ……)

 もともとフレデリックは令嬢からの人気が高い。フレンはフレデリックの未来の姿なので、年を重ねてより色気が増し令嬢から熱い視線を向けられている。そんな二人と一緒にいる自分は不釣り合いなのでは、とアリシアは萎縮していた。そんなアリシア気づいて、フレデリックはアリシアにそっと微笑んだ。

「アリシア、俺の選んだドレス、とっても似合っているよ」

 心の底から嬉しいと言わんばかりの微笑みを向けられ、アリシアは思わず赤面する。そんな二人を見て、周囲の令嬢たちがまた歓声を上げた。

「あのドレス、フレデリック様の瞳の色と同じね!フレデリック様に選んでいただいたなんて羨ましいわ」

 羨望の眼差しを向けられて、アリシアはまたいたたまれなくなる。

「お姉さま」
「メリッサ」

 緊張して固まっているアリシアを呼ぶ声がする。声のする方向を見ると、そこにはメリッサがいた。メリッサはフレデリックを見て目を輝かせるが、フレデリックはメリッサへほんの少しだけ微笑を向け、すぐにアリシアへ視線を戻す。そんなフレデリックにメリッサは一瞬ムッとするが、すぐにフレンへ話しかけた。

「フレン様、少しお時間よろしいでしょうか」

 話しかけられたフレンは、フレデリックを見る。フレデリックが頷くのを見て、フレンはメリッサへ返事をした。

「お話とはなんでしょうか」
「ここではなんですので、あちらへ行きましょう」

 そう言って、人気のないバルコニーへ向かっていった。

(メリッサがフレン様にお話だなんて珍しい。二人きりでお話するほど、いつの間に仲良くなっていたのかしら)

 なんとなく、胸のなかにモヤモヤとしたものを感じながらアリシアがそう思っていると、周囲の令嬢たちがメリッサを見てひそひそと話をし始めた。

「あら、メリッサ様はフレン様と仲がよろしいのかしら?」
「フレデリック様を諦めて、フレデリック様の親戚の方とお近づきになろうとしてるの?」
「まあ、ずいぶんと変わり身のはやいこと」

 周囲の令嬢がメリッサに対してひそひそと話をし始めたのを、フレデリックは冷ややかな瞳で見つめると、アリシアの背中にそっと手を回した。

「アリシア、二人が心配だ。変な噂を立てられないように俺たちも行こう」
「そう、ですね」