(そもそも試着する前に買うことを決めようとするなんて、お二人ともどういうつもりだったのかしら。試着することになったからよかったけれど)

 試着室でドレスに着替えながら、アリシアは思っていた。フレデリックは、試着したアリシアを見たら自分を保っていられないかもしれないから、などと言っていたが、ちょっと何を言っているのかわからない。

 まずはフレデリックの選んだドレスを着て、鏡を見る。

(綺麗なドレス……細かい宝石が散りばめられていて、光に当たるとキラキラしてるわ)

 アパタイト色、爽やかなブルーの美しいドレスは、肩が出ているが腕元にだけフワッとしたパフスリーブの袖がついている。ドレスは裾にいくにつれて段々のレースになっていて、レースには細やかな刺繍が施されていた。
 
「アリシア、どうかな?」

 カーテン越しに声をかけられて、アリシアは静かにカーテンを開ける。ドレスに身を包んだアリシアをみて、フレデリックは目を見張った。

「綺麗だ……」

 アリシアを見たまま顔を赤らめて呆然とするフレデリックを見て、フレンはやれやれとため息をついた。

「確かにそれも似合ってるな」
「でも、豪華すぎませんか?こんなに豪華だとドレスに着られている感じがして……」
「そんなことない!舞踏会に来ていくためだから豪華すぎることなんてないし、何よりもアリシアの美しさを一層引き立たせているよ。ああ、本当に綺麗だ、アリシア」

 フレデリックがあまりにもうっとりとして言うので、アリシアはそれ以上何か言うのをやめた。

「うん、確かに綺麗だ。すごい似合ってる。だが、お前は少し落ち着け。よし、アリシア、次は俺の選んだドレスも着てみてくれ」

 フレデリックをおさえながら、フレンがそう促すと、アリシアは試着室に戻った。

(フレデリック様、あんなに褒めてくれるなんて思わなかった)

 自分のドレス姿を見て高揚するフレデリックに、胸がなぜかドキドキする。

(ドキドキしてる場合じゃないわ、次はフレン様の選んだドレスね)

 ふう、と小さく息を吐いて、フレンの選んだドレスに着替え始める。着替え終わってから鏡を見て、アリシアは呆然とした。

(これは……あまりにも)

 こちらもアパタイト色のドレス、首から鎖骨まではレースになっていて、肩から背中は大きく開いている。マーメイドラインのドレスは美しく細かい宝石が散りばめられていて、片足には大きくスリットが入っていた。歩くたびに足が見え隠れするデザインだ。

 セクシー過ぎる。鏡を見ながらアリシアは思った。予想以上に大人っぽく、大胆なデザインだった。

「アリシア、どうだ?」

 フレンに声をかけられたが、出ていくのを躊躇うほどのセクシーさだ。だが、選んでもらった以上は見せなければ失礼な気がする。意を決してアリシアはカーテンを開いた。

「……っ!」

 アリシアを見てフレデリックもフレンも絶句する。フレデリックはさっき以上に顔を赤くして呆然としている。

(ああ、すごく恥ずかしい)

 あまりの恥ずかしさに俯いていると、突然フレンがアリシアの体を試着室に押し込んで、フレンも中に入るとカーテンを閉めた。

「!?」