「こっちのドレスがいい」
「いや、こっちのドレスの方が似合うだろ」

(いつまで続くのかしらこれ……)

 アリシアはフレデリックとフレンを見ながら小さくため息をついた。ドレス屋に着いてからどのくらい経っただろうか。フレデリックとフレンがアリシアに似合うドレスを選び、お互いにこっちがいい、それは違うと言い合っているのだ。

「アリシアはどう思う?」

 突然フレデリックに言われて、アリシアはハッと我にかえった。

「ええと、私は……」

 フレデリックとフレンの持つドレスを見て、うーんと唸った。正直、どちらも素敵なドレスだが、フレデリックが選んだドレスは思ったよりも豪華な気がして少し気後れするし、フレンが選んだドレスは少しデザインが大人びている気がするのだ。
 二つを眺めて真剣に悩んでいると、フレンがよし、と声を出した。

「フレデリック、お前はそっち、俺はこっちを買う。両方買ってしまえばいいだろ」
「は?アリシアの婚約者は俺だ。なんであんたまでドレスを買うんだよ」
「いいだろ、俺だってアリシアの未来の夫だぞ。買う権利あるだろが」

 フレデリックが噛み付くが、フレンはしれっとして気にしていない。

「それに、アリシアが迷うってことは両方気に入っているか気に入らないかのどちらかだろ。どっちも買うのが得策だ」
「……なるほど」

 フレンの言い分にフレデリックは顎に手を添えてふむ、と納得してしまう。

「いえ、あの、気に入らないわけではないのです。ただ、それぞれデザインが豪華だし大人っぽいなと思って……」

 慌ててアリシアがそう言うと、二人は顔を合わせて同時に言葉を発した。

「「だったら、まずは試着してみよう」」