観覧車を降りた私は、流斗さんに連れられて建物の影へ身をひそめた。
もうすぐ降りてくる兄と加奈さんに見つからないようにするためだ。
兄はまだしも、加奈さんに今の姿を見られるのはまずい。
ここにいるはずのない「優」がなぜここにいるのか、不審に思われるだろうし、唯がいないことの説明も考えなければならない。
そんなわけで作戦を練るため、私たちはいったん死角に身を隠したのだった。
身を隠すついでに、私は物陰でこっそりと着替え始める。
来ていた女の子の服を脱ぎ、持参していた男の子の服に袖を通す。
これで華麗に男性へ大変身! ……って言ってる場合じゃないんだけどね。
……いつもほんと大変なんだから。
こういうこともあろうかと、兄が私に着替えを持たせてくれていたのだ。
お兄ちゃん、ナイス! 心の中でガッツポーズを送る。
着替え終わった私が流斗さんの方へ戻ると、
「ごめんね。僕のせいでこんなことに……」
流斗さんが申し訳なさそうに頭を下げてきた。
私は思いきり首を振る。
「いえ! 流斗さんのせいじゃありません。
私が変身してしまうからで……」
気まずい空気が流れる。
さっきの告白の余韻が残っていて、なんだか妙に緊張感があった。
流斗さんも、いつもよりどこか落ち着きがないように見える。
