私は口をぽかんと開けたまま、流斗さんの言葉を聞いていた。
だって、初めて知ることばかり。
頭が追いつかない。
流斗さんが付き合おうと言ったのも、半分冗談だと思っていた。
優しい言葉も、ときめくような仕草も、ただ私をからかっているだけだと思ってた。
兄の妹だから優しくしてくれているんだと、そう思い込んでいた。
まさか、本当に私のことを好きでいてくれたなんて――。
「あ、あの……」
混乱したまま、口を開く。
いきなりの告白に、どう返せばいいかわからない。
いや、嬉しい。嬉しいけど……。
これまで流斗さんは兄の親友で、優しいお兄さん的存在だった。
まさか私を恋愛対象として見ていたなんて、考えたこともなかった。
戸惑いに揺れていると、流斗さんがぐっと迫ってくる。
「ねぇ、唯さん。僕とのこと、本気で考えてくれない?
これからは兄の親友としてじゃなく、一人の男として」
流斗さんの顔がどんどん近づき、息がかかりそうな距離になる。
ひ、ひえ〜。
「あ、えと……その、私、私。でもっ」
もう限界。
頭が真っ白になって、何も考えられない。
心臓が爆発しそうなほど激しく鳴り響く。
そのとき――
「あ……」
流斗さんの目が丸くなり、私をじっと見つめた。
まさか。
「唯さん……ごめん。僕のせいだ」
申し訳なさそうに謝る流斗さん。
そう……私はまた、優に変身してしまっていた。
