「私の気持ち、気づいていたのに……どうして交際を申し込んできたんですか」
「――わからない?」
外の景色を見たまま、流斗さんは問い返してくる。
「あ……まさか、報われない恋をしてる私に同情して?
あきらめるようにって、気遣ってくれたとか……。
流斗さん、優しいから。兄への気持ちに苦しんでる私が憐れに見えたんですよね」
照れ隠しみたいに、少しふざけた調子で言ってみた。
流斗さんがゆっくりと私の方へ振り向く。
その顔は、今まで見たことがないほど真剣だった。
「違うよ……。僕はずっと前から、君のことが好きだった」
静かな告白に、胸が震える。
「覚えてるかな。咲夜に紹介されて、初めて会ったあの日」
そう言われ、私は流斗さんとの出会いを思い出す。
あれは中学一年のとき。
兄が親友だと紹介してくれたのが、流斗さんだった。
「はい、覚えています。すごく優しそうで、格好いい人だなあって思いました」
私の言葉に、彼はくすくすと笑う。
「本当? 嬉しいな。
でもね、実はあのときが初めてじゃないんだ」
「えっ、そうなんですか?」
流斗さんは嬉しそうに頷き、懐かしそうに目を細めた。
