昼食を終えた私たちはカフェを出た。
人が行き交う通りで立ち止まり、次の行き先を話し合う。
「咲夜くん、私、観覧車に乗りたいな」
加奈さんが、甘えるように兄を見上げる。
「あ? ああ……そうだな」
兄の興味なさそうな返事に、加奈さんの表情がくもる。
「ねえ! お兄ちゃん、態度悪いよ。
加奈さんがお願いしてるんだから、一緒に乗ってあげなよ」
強めに言うと、兄は目を丸くした。
加奈さんも、意外そうに見つめてくる。
さきほどから、彼女に冷たい態度を取る兄のことが許せなくて、つい強めの口調になってしまった。
「な、なんだよ。急に。そんな怒らなくても……。
あ、そうだ! 四人で乗ろうぜ。楽しそうじゃん」
また、とんでもないこと。
私の怒りが一気に膨れ上がり、とうとう沸点を越えた。
「お兄ちゃん! 観覧車に四人で乗ってどうするの!?
恋人同士がふたりきりで乗るから楽しいんじゃない。
加奈さんと二人で乗って! 私は流斗さんと乗るから!」
言い切るや否や、私は流斗さんの腕に自分の腕を絡める。
そのまま彼をぐいっと引っ張っていく。
「ゆ、唯さん?」
突然腕を取られ、流斗さんは戸惑い、動揺を隠せないようだった。
