「じゃあ、俺オムライス頼むから、半分こしようぜ」
兄がいつもの調子で、軽く言う。
「え? う……ん。じゃあ、私はカルボナーラにしようかな」
「いいじゃん、それも半分こな」
嬉しそうに、無邪気な笑顔をこちらに向けてくる。
ふと見れば、流斗さんと加奈さんは驚いたようにこちらを見ていた。
その反応に、はたと気づく。
そうだよね……兄妹で料理シェアって、普通は恋人同士がすることだよね。
こんなの、おかしいよ。
私は兄を肘でつつき、顎で流斗さんたちを示す。
兄が私を見たあと、二人へ視線を移し、納得したように頷いた。
気づいてくれた! ……と思いきや、期待はあっさり打ち砕かれる。
「なあ、流斗たち決まった?」
空気を読まない兄の声。
ダメだ、何もわかっていない。
そんな兄に対し、流斗さんは戸惑いながらも紳士的に応じる。
「ああ、僕はカレーライスにするよ。加奈さんは?」
「え? ああ、私はホットケーキで」
ホットケーキ! 女の子っぽくて可愛いなあ。
加奈さんに視線を向けると、目が合った。
彼女は一瞬真顔になったものの、すぐに優しい笑顔に戻る。
え? 気のせい?
一瞬だけ怒ってるように見えたけど……まさか、ね。
ありもしないその考えを、慌てて打ち消した。
「じゃ、決まりな。今度は俺が注文してくるよ。流斗は待ってな」
そう言うと、兄はレジの方へと歩いていく。
さっきは流斗さんが動いたから、今度は自分が注文してくるってことか。
すごく鈍くて、わがままで、自分勝手だけど――すごく優しい。
そんなところがまた、好きなんだよなあ。
なんて、自分でも呆れるよ。
結局、さっきの意図は全然伝わっていなかったみたいだし。
遠ざかる兄の背を見つめながら、私は小さく肩を落とした。
