確かに、兄はイケメンだ。

 背はおよそ一七五センチ。
 細身だけど締まった身体つきで、男らしい筋肉もある。
 長い手足にどんな服もさらりと着こなす、まるでモデルのような体型。
 今流行りの小顔で色白。

 この切れ長の瞳に見つめられたら、誰だってドキッとしてしまうだろう。

 男らしいのに、笑うとどこか可愛げがあって。
 成績優秀で運動神経も抜群。

 ……ほんと、なんでそんなに完璧なの?

 困るんだよね、競争率が上がるから。

 群がる女子が多いと、私も心中穏やかでいられない。

 別に、そんなに完璧じゃなくてもよかったのに。
 むしろちょっとダメなくらいがちょうどいいのに。

 そんなことを考えながら、私は兄を恨めしそうに見つめる。

 すると、不意に、柔らかな声が耳に届いた。

「唯さん、どうしたんですか? そんな怖い顔して」

 目の前に、スッと美しい顔が現れる。

「わっ、びっくりした!」

 驚いて一歩後ずさる私を、にこにこと見つめるその人は――兄の親友、木村(きむら)流斗(ると)

 高校三年生で、うちの兄と同級生。あ、ちなみに私は一年生。

 さすがと言うべきか、彼もやっぱりただ者じゃなかった。

 成績は常に全国模試トップ。
 生徒会長を務め、全校生徒から厚い信頼と羨望の眼差しを集める稀有な存在。
 どんな問題も涼しい顔で解決し、先生たちからも頼りにされる。
 みんなのお兄さん……みたいな人。

 こんな彼が、どうして兄と親友になったのかは謎だけど。

 二人はお互いを信頼し、大切に思っている親友らしい。
 まあ、仲が良いのはよくわかる。

 私は二人をちらりと見た。

 さっきから、仲良く会話を弾ませている。
 ……だけど、この人たちが並ぶと余計に目立つんだよね。

 通りすがりの女子たちがじっと二人を見つめ、最後には私を睨んでいく。

 もう、勘弁してほしい。