そりゃそうだよ。せっかくのデート、ふたりきりがいいに決まってる。

「お兄ちゃん、何言ってるの?」

 少し怒った口調で問いかけると、兄は笑顔を崩さずに答えた。

「いいじゃんか、大勢の方が楽しいし! そうだ、ダブルデートってことにしよう」

 兄は一人で盛り上がっている。

「咲夜くん、私ふたりきりがいいな」

 加奈さんがぽつりと本音を漏らす。
 それでも兄は動じず、明るい声で言った。

「別にいいだろ? 二人でなんて、いつでもできるんだから。
 決まり! 今日は四人で楽しもう!」

 妙にテンションの高い兄はさっさとゲートへ向かってしまう。
 それを追う加奈さん。

 その後ろ姿を、私と流斗さんは唖然としながら見つめていた。

「……こうなったら、付き合いましょうか」

 流斗さんがため息交じりに言う。その顔は笑っている。

 なんて大人なの、と改めて彼の懐の大きさに感心する。

 それに比べて、お兄ちゃんは子どもみたい。昔から何も変わってないんだから。
 ……でも、そこが可愛いんだけどね、なんて思っていると――。

 ふと、視線を感じた。
 前を向くと、兄に寄り添う加奈さんがこちらを振り返っていた。
 一瞬、睨まれているのかと思うほどの視線。
 だけど、目が合うとすぐに笑顔に変わったので、ほっと胸をなでおろした。

 加奈さんにはあとで謝らないと。
 すっごく邪魔してるよね。ほんと申し訳ない。

 なぜか妹の私が気を遣わないといけないのが、ちょっと切ないけれど。

「さ、行こう」

 流斗さんが私の手を引き、眩しい笑顔を向けてくれる。

「はい!」

 兄たちを追うため、私たちも急ぎ足でゲートへ向かった。