「おう! おまえらも来てたのか」

 聞き覚えのある声。
 驚いて振り返ると、すぐそこに兄と加奈さんが立っていた。

「お、お兄ちゃん!? ……と、加奈さん?」

 ニコニコと微笑む兄。その隣には、兄に腕を絡ませた加奈さん。
 私は目を丸くしてふたりを見つめる。

 ど、どうしてここに?

「確か唯と流斗もデートだよな。俺もなんだ、加奈とデート」

 へへっと呑気に笑う兄の隣で、加奈さんはじっと私を見つめたまま軽く会釈した。
 その視線にわずかな棘を感じるような……。

「お兄ちゃんもここでデートだったの?」

 全然知らなかった。お兄ちゃんも今日デートだったなんて。

「おう。でも偶然だよなあ、デートの場所が被るなんてさ」

 兄はどこか薄ら笑いを浮かべながら視線を外す。

「ほんと偶然だね。じゃあ僕たち、行くから」

 流斗さんが私の手を取り、颯爽とゲートへ向かおうとする。

「なあ!」

 兄の大声で、私たちは足を止めた。
 視線が兄に集中する。

「あ、えっと……。ここで会ったのも何かの縁だし、一緒に行かねえ?」

「は?」

 私は呆れ顔で兄を見つめる。
 流斗さんは穏やかに微笑み、加奈さんは驚きの表情で兄を凝視していた。