待ち合わせ場所の駅前は、休日らしくにぎやかだった。
 行き交う人の流れに飲まれそうになりながら、私はきょろきょろと辺りを見まわす。

 鼓動は、さっきからずっと落ち着かない。

 ……だって、流斗さんとの初デートだもん。

「だーれだ?」

 突然、後ろから目隠しされてしまった。

「えっ!」

 驚いて振り返ると、そこには優しい笑みを浮かべる彼の姿。
 その近さに思わず一歩後ずさる。

「ははっ、驚いた?」

 どこか楽しそうに笑う流斗さん。

「お、おどろきましたよ。もう、流斗さんでもそんなことするんですね」

 頬を膨らませると、ふたりでくすくす笑い合う。

「ごめんごめん。唯さんの可愛い反応が見たくて」

 ドキッ。

 さらりと、ときめくことを言わないでほしい。
 私は恥ずかしくて俯いてしまう。

「じゃあ、行きましょうか」

 流斗さんが、自然に私の手を取る。

「あ……」

 見上げると、優しい眼差しが返ってきた。
 何も言えず、頬の熱を感じながら彼に導かれるように歩き出す。

 手をつないで街を歩くなんて、まるで恋人同士みたい。

 ……って、恋人同士だった!

 それでも、こんな経験は初めてで、胸のドキドキが止まらない。

 心臓、最後までもつかな……。

 それに、あんまりドキドキすると――優に変身してしまうかもしれないんだよね。
 気をつけないと。