――兄は、モテる。
 どれくらいモテるかって? 正直、アイドル並みだ。

 さっきのことが何よりの証拠だ。
 家の前で待ち伏せなんて、よくある話。

 兄と並んで歩けば、いつも女性たちの熱い視線を集める。
 勇気ある強者は、堂々と声をかけてくるほどだ。

 学校でも、告白や贈り物なんて当たり前。
 告白はいつも、涼しい顔でやんわりと断っているけれど――
 食べ物系の差し入れなんかは、ちゃっかり受け取っていたりする。

 渡されるのは、だいたいお菓子か何かの食べ物で、
 兄いわく「お菓子代が浮いてラッキー」らしい。

 クリスマスやバレンタインなんて、もう大変。
 荷台が必要なほどのプレゼントの山が築かれる。

 もちろん兄ひとりで消費しきれるわけもなく、家族や知人、さらにはご近所さんにまでおすそわけする始末。

 でも、そんな中で感心するのは、兄が貰ったものを決して粗末にしないこと。
 ちゃんと女の子たちの気持ちを大切にしている。

 そういう優しいところが……やっぱり、好き。

 だけど、妹としてはたまったものじゃない。

 兄の隣にいるだけで、敵意むき出しの視線が突き刺さる。
 妹なのに! と叫びたくなるけれど、彼女たちにとってはそんなこと関係ないらしい。

 それに、私たちが血の繋がらない兄妹だという噂も広まっているようだった。
 そのせいで、余計に彼女たちの嫉妬が燃え上がる。

 まあ、事実だから否定はできないけど……。

 私は隣でのんきにあくびをする兄をじっと見つめた。