「まあ、いいや。それよりさ、優くんのこと教えてよ」
蘭の瞳がキラッと輝き、ぐっと身を乗り出してくる。
「え? ど、どうしたの? まさか蘭、優のこと……」
胸がざわつく。そんなはず、ないよね――
予感が的中しませんようにと願ったけれど、その願いは届かなかった。
「うん……優くんのこと、いいなって思って」
やっぱり!
息を呑み、言葉を失う。
気まずさをごまかすように、無理やり笑みを作った。
「そ、そうなんだ……でも、やめといたほうがいいかな」
言葉を選びながら、なるべく穏やかに伝える。
本当は焦っていた。けれど、それを悟られたくなかった。
「優って、ちょっと変わり者だし……。
蘭にはもっと素敵な男性の方が合ってると思う」
なんとか心変わりを誘おうと、やんわりと釘を刺してみた。
でも――
「えー、だって私、優くんタイプなんだもん!」
蘭はぽわんと頬を染めて、キラキラとした目を向ける。
「咲夜さんや流斗さんもいいなって思ってたけど、結局、二人とも唯のものじゃん?
私には手が届かない存在なのよ……でも、優くんは違う。
やっと現れた私の本当の王子様なの!」
まるで恋する乙女そのもの。
蘭はもう完全に、乙女モードに突入していた。
……ちょっと待って。
お兄ちゃんと流斗さんが“私のもの”って。
いったい、どこからそういう発想になるの!?
私の頭の中に、でっかい疑問符がいくつも飛び交った。
「まあ、そういうことだから。唯も私のこと応援してよね」
期待に満ちた蘭のまなざしに、言葉が喉につかえる。
そんな顔されたら……もう何も言えないじゃない。
はぁ……どうしよう……。
頭の中で、悩みのタネがぷくぷくと芽吹いていく音がした。
