義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます


 今は流斗さんと並んで歩きながら、帰宅中。
 制服は、さっき理事長室で着替えたものだ。

 やっぱり、こっちの制服のほうが落ち着く。
 そっと視線を落とすと、スカートの裾が目に入り、どこかほっとした気持ちになる。

 隣を歩く流斗さんにふと視線を向けた。
 ほんとうに申し訳ない。
 兄や彼に迷惑ばかりかけて……自分が情けなくなる。

 そんなふうに申し訳ない気持ちでいっぱいになりつつも、ふと加奈さんの顔が頭をよぎった。

 お兄ちゃんにあんな彼女がいたなんて……。
 かなりショックだった。
 彼女がいるのは知ってたけど、よりにもよって、あんなに可愛い人だなんて。

 まあ、別にいいんだけど。別に。

「どうしたんですか? そんな不機嫌そうな顔をして」

 流斗さんが私の顔を覗き込んできた。

「え? あ、別に」

 私は慌てて視線を逸らす。

「加奈さんのことでしょう?」

 図星を突かれ、流斗さんを凝視した。

「な、な……」

 言葉が出ない私を見て、流斗さんがくすっと笑う。

「やっぱり、唯さんは可愛いですね」

「えっ?」

「ねえ、唯さん。僕たち、お付き合いしませんか?」

「……は?」



 ――突然の告白から、数時間が経った。

 私は優の姿のまま、夕食を頬張っていた。

 目の前には父と母。そして隣には兄。

「おまえ、なんで昼間唯に戻ったばかりなのに、また優になるかな……おまえまさか」

 兄が目を丸くして私を見つめる。
 ドキッと心臓が跳ねた。

 な、なんか、感づいた?

「優の格好、結構気に入ってるのか?」

 兄の言葉に、私は肩をガクッと落とす。

 ……そうだよね。

 兄はまだ、あのことを知らない。
 だから、想像できるはずもない。

 そう、あのとき――
 私は昼間の出来事を、こっそり思い返していた。