そして、お昼休み。
 またも教室に迎えにきた兄と一緒に、私は屋上へ向かった。

 途中で蘭とすれ違ったが、声をかけてこなかった。
 けれど、何か言いたげに、じっとこちらを見ていた気がする。

 視線が刺さるように感じたけれど……あれはいったい。
 まあ、気にしないことにしよう。

 屋上に着くと、そこにはすでに流斗さんが待っていた。

「やあ、待ってましたよ」

 眩しい笑顔で迎えてくれる流斗さん。

「ちっ……」

 またも兄が舌打ちする。

「もう、お兄ちゃん! 失礼だよ。朝も流斗さんに舌打ちしてたよね?」

 兄の態度が気に食わなくて、思わず強い口調になってしまった。

「別に……。いいだろ、どうせおまえにはわかんねえよ」

 不機嫌そうに言い放ち、兄はベンチにドスンと腰を下ろした。

 なにそれ、態度悪いなあ。

 私が兄を訝しげに見ていると、流斗さんが私の隣にそっと立ち、顔を近づけ耳元でささやいた。

「どうやら、私は邪魔者みたいですね」

「へ?」

 私は驚いて流斗さんを見つめる。

 なんで? 流斗さんが邪魔者?

 私が戸惑っていると、流斗さんはくすくすと楽しげに笑った。
 そして、何事もなかったかのように兄の隣へ歩いていき――ふたりの間に、少し間を空けて腰を下ろす。

 ……えっと、そこって、私が座る場所?

 ぽっかり空いたその隙間をじっと見つめる。
 よくはわからないけれど、ほかに選択肢もない。だって、そこしか空いていないのだから。

 私は少し躊躇いながら、おずおずとふたりの間に腰を下ろした。