身支度を終え、ダイニングに向かうと、テーブルにはすでに朝食が並べられていた。

 トーストに目玉焼き、ベーコンとサラダ。
 そして牛乳。
 可愛いランチョンマットの上に、きれいに整えられている。

「あら、唯ちゃん、おはよう」

 食事の準備をしていた母が、にこやかに声をかけてきた。
 今は私の母でもある、兄・咲夜の母――川野すみれ。

 母はとても可愛らしい人だ。
 少し抜けているところもあるけれど、それがまた魅力的で。
 ふわふわとしたロングのウェーブヘアが歩くたびに揺れ、見ているだけで癒やされる。

 そんな母が私に気を取られていたせいか、手元のコップを倒して水をこぼしてしまった。

「あらっ!」

「お母さん、大丈夫?」

 私は急いで布巾を手に取り、水を拭き取る。

「ごめんね、ありがとう」

 にこっと微笑む母に、私も自然と笑顔になる。

 そのやりとりを見ていた父が、優しく声をかけてきた。

「唯、おはよう」

 穏やかな笑みを浮かべるのは、私の父親・川野雅人(まさと)

 温厚で優しく、ちょっぴりお人好しだけど頼りになる。
 私はそんな父が大好きだった。