毎日が、こんなふうに気持ちを抑える戦いだ。
 好きな人と一緒に暮らしている状況で、想いを隠し続けるのは想像以上に大変なことだった。

 そう、私は兄の咲夜に恋をしている。

 一応言っておくけど、咲夜は実の兄じゃない。

 私の父と、兄の母が恋に落ちて再婚した。
 私が五歳、兄が七歳のときに、義理の兄妹になったのだ。

 初めてできたお兄ちゃん。
 幼い私は、それだけで胸が高鳴っていた。

 いつもそばにいてくれて、優しくて頼りになる兄。

 だけど、年月が経つにつれ、少しずつ関係が変わっていった。

 兄は私をからかうようになり、ちょっかいを出してくるようになった。
 そのころは嫌われたのかもしれないと不安に思ったこともあったけれど……。

 ふとした瞬間に見せる優しさに触れるたび、私は妹として愛されているんだと感じていた。

 そして気がつけば、兄に惹かれていた。

 誰かにいじめられると、すぐに守ってくれる。
 寂しいとき、悲しいときには、寄り添ってくれる。
 絶対に私を一人にはしなかった。

 きっと家族として愛されているんだろう。
 妹として、可愛いって思ってくれてるんだと思う。

 でも、それ以上はきっとない。

 この気持ちを打ち明けたら、兄はどう思うだろう。

 きっと気持ち悪いと思われる。
 嫌われてしまうくらいなら、この恋を心に閉じ込めたまま生きていく。

 そう、私はこの気持ちを一生、封印するつもりだった。