戸惑っていると、ふと流斗さんの視線に気づいた。
目が合って、どきりとする。
思わず逸らしたけれど――すぐに失礼だと思って、そっと戻した。
流斗さんは、いつもの優しい笑顔を向けてくれる。
いつもこの笑顔にほっとする。
流斗さんの優しい眼差しが好き。
兄の親友が彼で、本当によかった。
そばにいてくれたら、どんな問題も乗り越えられそうな気がする。
もちろん兄のことも信頼しているし、頼りにしている。
でも、それとは違う安心感を、流斗さんには感じる。
「お、嬉しそうな顔して、どうした? 何かいいことでもあったのか?」
兄が至近距離から覗き込んできて、心臓が爆発しそうな音を立てた。
必死で抵抗し、兄の腕から逃げ出した私は、ふぅっと息を吐いて二人に微笑みかける。
「お兄ちゃん、流斗さん、本当にありがとう。頼りにしてます」
二人がそばにいれば、きっと大丈夫。
不思議と前を向ける気がした。
――そして、午後。
授業が始まり、私は優の姿で勉強に励んでいた。
ところが、しばらくすると――
急に心臓が締め付けられるような痛みに襲われた。
「……っ、はっ……う……」
突然苦しみ出した私に気づき、隣の生徒が慌てる。
「ど、どうしたの? 大丈夫? 先生!」
教室がざわつき、先生が学級委員に保健室へ連れていくよう指示を出した。
だけど、嫌な胸騒ぎを覚えた私は、その申し出を断った。
「だ、大丈夫です。僕、一人で保健室へ行きます」
発作が収まった隙に、急いで教室を飛び出した。
廊下を早足で進むが、途中でまた苦しさがぶり返す。
「はっ……は、っう……」
その場にしゃがみ込み、荒い呼吸を必死に整えようとする。
ドクン――心臓が大きく跳ねた。
ドクドクと熱い血が全身を巡り、体中が沸き立つように熱を帯びる。
やがて、鼓動は少しずつ落ち着きを取り戻していく。
正常なリズムが戻ってきて、私はそっと胸に手を当てた。
……よかった。
「あれ? 優くん?」
その声に振り返ると、そこには父がいた。
校内を巡回していたのだろうか。
驚いた様子で駆け寄ってくる。
「お父さん……」
「はは、学校でそう呼んじゃダメだよ。こんなところでどうしたの?」
父は笑顔で近づいたが、私の顔を見た瞬間、はっと固まった。
どうしたんだろう?
「え……戻ってる」
「え?」
