蘭がにこりと微笑み、人だかりをかき分けて歩み寄ってくる。
そして、顔を近づけ、低い声で囁いた。
「ねえ、南……優くん? あなたって、うちのクラスの川野唯に似てるわよね」
背筋がピンと伸びる。
ば、ばれた!?
目を丸くして蘭を見る。
どうしてみんな、そんなに鋭いの!?
流斗さんといい、蘭といい……。
やばい、なんとかごまかさないと!
私は必死に昨日の家族会議で決めた設定を思い出す。
「ああ、川野唯ね。僕、唯の従弟なんだ」
そう言った瞬間、その場にいた全員が「ええっ!?」と声を上げた。
蘭の笑みがすっと消える。
一瞬の静寂のあと、教室はざわめきに包まれた。
「へー! やっぱり似てると思った」
「ね、可愛いと思った!」
「咲夜さんとも従弟ってことだよね? なるほど〜」
飛び交う声に、私はついていけない。
蘭がじっと顔を覗き込んでくる。
美しい顔が近づき、思わず見惚れてしまった。
……やっぱり綺麗だなあ。
蘭って美少女だ。
「ふーん、唯の従弟なの。……ふーん」
じろじろと見つめるその視線に、私は慌てて顔を逸らした。
「私、羽鳥蘭。唯の親友なの。よろしくね」
蘭はにこっと微笑み、瞳を輝かせる。
その表情はまるで恋する乙女のようで――ぎくりとする。
まさか……いや、気のせいだよね?
私は首を振り、浮かびかけた考えを振り払った。
その後も質問攻めは続き、私は応戦するしかなかった。
なぜか皆、私や兄のことを興味津々に聞いてくる。
なんでそんなに、私たちのことが気になるの?
ふと気づけば、蘭の姿は輪の中から消えていた。
