昼休み。
私は蘭を誘い、屋上へ向かっていた。
――彼女にも、話しておかなくちゃ。
階段を上るたび、鼓動が速くなる。
変身のこと。蘭にはずっと黙っていた。
……騙していたようなものだ。
許してくれるだろうか。
胸に不安が渦巻いていく。
屋上に着くと、すでに兄と流斗さんの姿があった。
「おう、来たか」
兄が笑いかける隣で、流斗さんがじっと私を見つめる。
嬉しそうな顔なのに、どこか瞳が潤んでいる。
「唯さん……」
感極まったように近づいてきた流斗さんが、そっと私を抱きしめた。
「よかったねえ、元に戻れて」
その言葉で、すぐに察した。
ああ、もう聞かされてるんだ。
私が元に戻って、もう変身しないことを。
「ありがとう、流斗さん」
抱き返そうと、そっと腕を伸ばしかけた、そのとき――。
「てめえ、人の女に何してんだ!」
慌てて駆け寄ってきた兄が、私たちを引き剥がす。
「なんだよ、ちょっとくらいいいだろ?
咲夜は毎日唯さんを堪能してるんだから」
「なっ!」
兄は顔を真っ赤にし、流斗さんは拗ねたように視線をそらした。
「おまえ、なに言ってんだ! そ、そんな――」
兄がさらに詰め寄ろうとしたところで、私は二人の間に割って入った。
「もう、やめてよ! 喧嘩するためにここに来たんじゃないでしょ?」
「あ……ああ」
私がたしなめると、兄はしゅんと肩を落とした。
「あ、あのぉ。私、事情がよくわかってないんですけど」
しばらく静観していた蘭が、ぽつりとつぶやいた。
置いてけぼりをくらった子どものように、きょとんと立ち尽くしている。
そうだ、蘭にもちゃんと話さなきゃ。
心を決め、彼女へ向き直った。
「――蘭、話があるの。驚くかもしれないけど、聞いて」
私の真剣さに少し驚きつつも、蘭は戸惑いながら小さく頷いた。
