「ちょっと、まったあ!! それ以上は駄目だーっ!!」
突然、リビングに父の怒号が響き渡った。
驚いて振り返ると、父と母が立っていた。
鼻息荒く仁王立ちの父と、申し訳なさそうに微笑む母。
「な、なんで!? もう寝たんじゃ……」
ぽかんと二人を見つめる。
まさか、ずっと見られてた……!?
顔から火が出そうになる。
突然、父がずかずかとこちらへ詰め寄ってきた。
目の前で立ち止まったかと思うと、体をぷるぷる震わせる。
「ぜ、絶対ダメだー! 今日はもう二人とも寝なさーいっ!!」
その怒鳴り声に、兄と私は顔を見合わせた。
普段温厚な父が……ここまで怒ったのは初めてだった。
そのまま、私たちはすごすごとリビングを後にしようとする。
そのとき――母がそっと私に耳打ちしてきた。
「ごめんねぇ、邪魔しちゃって。
なんとか寝室へ連れて行こうとしたんだけど、唯ちゃんのことが心配で、雅人さん離れなかったのよ。
ふふっ、でも大丈夫。これからチャンスは山ほどあるから。母さん、応援してるわ」
うふふっと笑う母は、どこか楽しそう。
「そこっ! 早く寝るっ!」
再び響いた父の声に、私は慌てて二階へと避難する。
ほんと、びっくりした。
あの、いつものほほんとしたお父さんが、まさかこんなふうに変貌するなんて……。
自分の部屋に向かいかけたところで、後ろから声がかかった。
「唯、おやすみ。また今度な」
片目でウインクして、優しい笑みを残したまま兄は部屋へと戻っていった。
その背中を見送りながら、私は小さく息をつく。
まだ、ドキドキしてる。
あのままお父さんが来なかったら、私……なんて考えて、また顔が熱くなる。
「さ、寝よ寝よ」
浮かんでくる妄想を振り払うように、私は自分の部屋へと入った。
こうして――私の変身劇は、無事に……幕を閉じたのだった。
