気づけば、兄と私の二人きり。
「なあ」
低い声に、肩がビクッと跳ねる。
「な、なに?」
二人きりになると緊張してしまう。
以前からそうだったけど、今回は鼓動がやけに速い。
やはり、お互いの気持ちを知ってしまったあとだから、だろうか。
「変身しないかどうか……試してみるか?」
「え?」
兄が、いきなりぐっと顔を近づけてきた。
もう数センチで唇が触れそうな距離。
「っ……!」
息が止まりそう。
ドキドキドキ、心臓が暴走する。
「どうだ?」
兄が囁くように尋ねる。
「わ、わかった。もうわかったからっ! 変身しない、しないからー!」
動揺しすぎて、声を張り上げていた。
でも、確かに。変身はしていない。
本当に元に戻ったんだ。
ほっとしたのも束の間、ほっとできない状況が続く。
「……本当か? もっとドキドキしないと、まだわからないかもな」
そう言って、兄が私をソファに押し倒した。
「ちょ、ちょっと!?」
冗談とも本気ともつかない顔で、兄がさらに近づいてくる。
大好きなその顔が、目の前いっぱいに迫ってきて――
も、もう無理っ!
どうにかなっちゃうよ!
心臓が飛び出しそうなくらい、激しく脈打つ。
「唯……」
そのやわらかな声に、閉じていた目をそっと開いた。
目の前には、兄の顔。
まっすぐに見つめてくる瞳に、息がうまくできない。
――でも、なぜだろう。
視線が合っただけなのに、胸を締めつけていた緊張がほんの少しゆるんだ。
その眼差しはあたたかくて、包み込まれるみたい。
ドキドキしていた鼓動も、いつのまにか少し落ち着いていた。
