それから私たちは、亡き母の思い出話に花を咲かせた。
父も兄も、これまでのつらかった日々を、ぽつりぽつりと語ってくれる。
母がふと涙ぐんだときは、みんなで肩を寄せ合い、そっと抱き合った。
言葉を重ねるたびに、結び目が少しずつ固くなっていくのがわかる。
本当の家族に近づいている――そんな実感が静かに胸に灯った。
家族って、血の繋がりだけじゃない。
きっと、愛でつながっている。
私たちは出会うべくして出会った。
その夜、強くそう思った。
家族の絆、そして兄への想い。
すべてがつながって、心は幸せで満ちていた。
――ただ、ひとつを除いて。
そう。変身のこと。
この不可思議な体質は、いつ終わるんだろう。
もし、ずっとこのままだったら――。
そんな不安を抱えていたある日、事態は突然、動き出した。
学校の帰り道。
私と兄が並んで歩いていると――
「あの」
声をかけられ、足を止めた。
振り返ると、ひとりの男性が立っている。
キャップを深くかぶり、パーカーにジーンズ。
無精ひげをたくわえたその人は、四十代くらいに見えた。
私が訝しげに見つめると、兄がすっと前に出る。
「何か、用ですか?」
男は静かに口を開いた。
「君、薬……飲んだでしょ? 変身、してるよね」
「っ!」
息が詰まり、その場に固まる。
どうして、それを――?
「おまえ、いったい何者だ!」
兄が険しい顔で詰め寄ろうとする。
「待って!」
私は慌てて声を上げ、兄を制した。
それから男の方へ向き直り、真剣な眼差しで見据える。
「あなた……もしかして、あのクレープ屋さん?」
